1ヶ月前程になるが、映画(DVD)「クロワッサンで朝食を/原題; UNE ESTONIENNE A PARIS」(2012年制作)を観た。往年の名女優、「ジャンヌ・モロー/Jeanne Moreau」主演というので、レンタルされるのを待ちかねていた映画。原題は、「パリのエストニア人」というような意味であろうか。
エストニアの小さな町で暮らすアンヌ(ライネ・マギ)は、2年間付きっ切りで介護をしていた母親を亡くし、放心状態だった。そんな折り、多少フランス語が話せる彼女に、パリでの家政婦の仕事が舞い込んでくる。意を決して悲しみを振り切るように、憧れのパリに向かったアンヌを、待っていたのは、高級アパルトマンに独りで暮らす、毒舌で気難しい同じエストニア出身の老婦人フリーダ(ジャンヌ・モロー)だった。年齢や性格や境遇が全く異なる2人の女性が、ぶつかり合いながらも次第に心を通わせていく姿を描き出す。
監督は、「エストニアが生んだ新しい才能」と、ヨーロッパ各国で熱い注目を集めている「イルマル・ラーグ/Ilmar Raag」監督。これが、長編映画監督デビュー作だという。気難しい老婦人フリーダを演ずるのが、「死刑台のエレベーター」や「突然炎のごとく」、「エヴァの匂い」などで知られる名女優、「ジャンヌ・モロー」。そして、パリで次第に輝きを取り戻していく家政婦アンヌを好演したのは、エストニアの個性派女優「ライネ・マギ/Laine Magi」。なんと、「ジャンヌ・モロー」、1928年生まれの86歳。「ライネ・マギ」、1959年生まれの55歳。ふたりの演ずる味わい深い人間ドラマに魅了されてしまった。「25年目の弦楽四重奏」、「アンコール!!」と並んで、今年前半に観た「じじばば映画」のベストにランクされる映画である。
クロワッサンで朝食を [DVD]
ポニーキャニオン
「映画『クロワッサンで朝食を』予告編」
全く老いを感じさせない鋭い眼光と圧倒的な演技力を見せた「ジャンヌ・モロー」。「フランス映画界の至宝」とさえ呼ばれている。1928年パリにて、フランス人の父親とイギリス人の母親の間に生まれる。「フランス国立高等演劇学校 (コンセルヴァトワール)」で演技を学び、1948年にデビュー。その後、1950~60年代に、「ルイ・マル/Louis Malle」、「フランソワ・トリュフォー/François Truffaut」などヌーヴェル・ヴァーグ時代を代表し、映画史に名を刻む名監督たちの数々の傑作に出演した。「死刑台のエレベーター/Ascenseur pour l'échafaud」は、私の映画歴、ジャズ歴に大きな影響を与えた作品でもある。(参照拙ブログ
「青春のシネマ・グラフィティ(5) ~突然炎のごとく/ジャンヌ・モロー~」)
一方、アンヌ役で、「ジャンヌ・モロー」と互角に渡り合ったのは、エストニア出身の女優、「ライネ・マギ」。「ジャンヌ・モロー」をして、「彼女は、まさに発見です」と言わしめたという。母の看病に追われ、気がついたら人生も半ばを過ぎ、抜け殻のようになったが、パリでもうひとつの人生を取り戻していくアンヌを、控えめながら、強い意志を感じさせる演技で、好演。私にとって、またひとり好きな女優さんが増えたかな。
こんなメッセージが残されていました。「Age doesn't protect you from love. But love,to some extent,protects you from age. (いくつになったって恋することとはできるわ。恋をしていれば、ちょっとの間かもしれないけど、歳を忘れられるわ。) 」 ・・・・・ Jeanne Moreau
さて、「ジャンヌ・モロー」、歌も歌います。トリュフォー監督の映画、「突然炎のごとく/Jules et Jim」中で歌ったシーンをご記憶の方も多いのでは ・・・。あの映画の中で、ジャンヌが歌うシャンソンは、「つむじ風/Le Tourbillon」。トリュフォーがその場で即興で映画に取り入れたものだという。 その「つむじ風」をアルバム・タイトルにして、シャンソン、ボサ・ノバ、ジャズ、ポップスを「ジャンヌ・モロー」が軽やかに歌うアルバムがあります。
つむじ風
ジャンヌ・モロー / マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
その中から2曲。「突然炎のごとく」の挿入歌、「つむじ風」と「インディア・ソング」を ・・・。決して上手くはないのですが、演技同様、「味」を感じます。とはいえ、フランス語は全くわからないのですが ・・・。
「Jeanne Moreau-Le Tourbillon De La Vie (in Jules et Jim) 」
「Jeanne Moreau - India Song」