隣町にあり、去年100周年を迎えた「宝塚歌劇団」を象徴する歌である「すみれの花咲く頃」の元歌は、古いシャンソンであるという。今回、「60歳過ぎたら聴きたい歌」で取り上げるのは、もうひとつの「すみれ」の歌、 「コートにすみれを」という邦題で知られている「Violets For Your Furs」(1941)である。「トミー・ドーシー楽団/the Tommy Dorsey Orchestra」の専属アレンジャーだった「マット・デニス/Matt Dennis」が1941年に作曲した、ちょっと気障なラヴ・ソング。冬の歌ではあるが、すみれの花に春のような恋の気分を託した歌は4月でもふさわしい。
【 Violets For Your Furs/コートにすみれを 】
作詞;トム・アデア/Tom Adair 作曲;マット・デニス/Matt Dennis
「♪ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
I bought you violets for your furs 僕があげたすみれの花をコートに飾ったら
and it was spring for a while, remember? ちょっとだけ春を感じられたことがあったね
I bought you violets for your furs 僕があげたすみれの花をコートに飾ったら
and there was April in that December. 12月なのに4月のような気分になったね
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I bought you violets for your furs 僕があげたすみれの花をコートに飾ったら
and there was blue in the wintry sky, 冬空に明るい光が差し込んできたね
You pinned my violets to your furs 僕があげたすみれの花をコートに飾ったら
and gave a lift to the crowds passing by, 道ゆく人々が笑顔で微笑んだね
You smiled at me so sweetly, 君は僕を見て、とっても優しく微笑んだ
since then one thought occurs, その時なにかが芽生えたんだね
That we fell in love completely, そして二人は恋に落ちたんだ
the day I bought you violets for your furs. すみれの花をコートに飾ったら時からね ♪」
この歌を有名にしたのは、やっぱり、大御所「フランク・シナトラ/Frank Sinatra」の「Song for Young Lovers」(1953年)でしょうか。「チェット・ベイカー/Chet Baker」も負けじといい味を出しています。
しかし、やっぱり、女性ヴォーカルがこの歌には似合いそう。「ビリー・ホリデイ/Billie Holiday」が衰えた体と精神を振り絞って録音した晩年の傑作、「Lady in Satin」(1958)に収録されたこの歌は哀感を誘う。そして、我が長年のミューズ、「ステイシー・ケント/Stacey Kent」も歌っています。この歌は、明るく可憐な歌声がいいですね。
演奏盤であげるとすれば、1957年にリーダーとして初めて録音した「ジョン・コルトレーン/John Coltrane」の「Coltrane」でしょうが、私は、「お風呂」としておなじみの「マーティ・ペイチ/Marty Paich」の「I Get A Boot Out Of You」に収録されているナンバーが好きです。