今回の帰省の目的(?)の一つは実家の庭の雑草刈り。庭と言っても90坪ほどあり、雑草といっても、前回刈ったのが6月の初め、1ヶ月半近く経っているから、この時期の数や丈は半端じゃないのである。前回同様、「ヘクソカズラ(屁糞葛)」や「ドクダミ(蕺草)」に手を焼きながら、なんとか1日で刈り終えた。その甲斐あって、今は観る人のいない主なき庭ではあるが、花の美しさが際立つようになった。母親が好きだった花々に思いを馳せる夏でもある。
松本地方は、方言や訛りが強い地方ではないと思うが、それでも食材の買出しなどにいく地元のマーケットで耳にする信州弁・松本弁には懐かしさを感じてしまう。方言、お国訛り、言葉がサウダージのベースにあるということは、朝ドラなどの人気をみてもわかるとおりである。
さて、東北弁でジャズを歌った女性歌手がいる。「伊藤君子」。日本人女性ジャズ歌手では私が最もご贔屓にしている歌手である。わたしは信州で生まれ育ち、仙台で一時期学生生活を送っていたためか、かっては、関西弁より、むしろ東北弁により親近感があった。
ジャズを東北弁で歌う。そんな発想はどこから生まれたのであろうか。彼女はこんなふうに語っている。『きっかけは、青森に毎年お仕事に行かせて頂いていたんですね。そこで伊奈かっぺいさんとお会いできることがありまして、いろんなお話をしているうちに「津軽弁でジャズをやってみたら、おもしろいんじゃないか」とおっしゃって下さって、やってみましょう、ということになりました。 ・・・・だから、かっぺいさんにそのお話を頂いた時「あ、これはおもしろいな、」と思って、(アルバム制作にあたってはジャズのスタンダードを)日本語訳にしなくてはいけないこと、かっぺいさんに考えて頂くこともあるし、かっぺいさん以外の方にも助けて頂きましたし、その準備で1年半くらいかけたかと思います。あのね、聞く人によってはフランス語みたいに聞こえるとか、どこの言葉なんだろう、とか全く日本語に聞こえないというところが面白いんだと思います。」
「伊藤君子」に「津軽弁でジャズを歌って欲しい!」という「伊奈かっぺい」氏のリクエストに、津軽弁に惹かれていた彼女は喜んで応え、5曲の「津軽弁のスタンダードナンバー」が出来た。それが、アルバム、「ジャズだが?ジャズだじゃ! ~津軽弁ジャズ~」。最初は一部限定のリリースだったが、2009年に一般にもリリースされた。
「伊藤君子」。1946年香川県小豆島町生まれのジャズ・シンガー。4歳のとき、ラジオ番組から流れる「美空ひばり」の歌声に魅了され、歌手を志したという。1982年、ポップ・演歌歌手としてデビューしたが、その後、ジャズ・ピアニストとの出会いをきっかけに、ジャズ・シンガーの道へ進み、1984年には半年間ニューヨークに滞在し、音楽修行した。1989年、アニメーション映画「イノセンス」の主題歌をタイトルとし、日米同時発売されたアルバム、「フォロー・ミー/Follow Me」が米国ラジオ&レコーズ誌のコンテンポラリー・ジャズ部門の16位にチャートイン。その後も幅広い活動を続ける。2000年にリリースしたアルバム「KIMIKO」はスイングジャーナル誌2000年度ジャズディスク大賞受賞。
ジャズだが?ジャズだじゃ!~津軽弁ジャズ~
伊藤君子 / ビデオアーツ・ミュージック
パーソネルは「伊藤君子(vocal)」の他、アレンジとピアノを「大石学」、ベースを「坂井紅介」、ドラムは「海老沢一博」が勤めている。企画者でもある「伊奈かっぺい」が一極だけオリジナルで参加しているのもご愛嬌。
「大石学」の印象的なピアノから始まる冒頭の曲は、「My Favorite Things(私の好ぎなもの)」。
「My Favorite Things - 伊藤君子」