今日は、地域の足となっている「能勢電鉄(通称;のせでん)」がほぼ隔月に主催する「悠遊セミナー」の日。この地域の歴史や自然に関するテーマについて専門家がわかりやすく解説してくれるため、今回で36回を数えるが、毎回結構な人気である。今日のテーマは、「山岳寺院 槻峯寺(つきみねでら)と長洲(ながす)の浜 ~能勢・剣尾山に残る寺院跡と尼崎・長洲の燈籠堂について~」。能勢町にある旧蹟、「月峰寺(げっぽうじ)」についてのセミナーであった。馴染みのある地元の歴史に関わる話を聞くのは興味が湧くし、面白い。
このセミナーに触発され、「摂津名所図会」、「剣尾山・月峰寺(槻峯寺)」について、すこし調べてみた。
今は、大阪府と兵庫県に分かれているが、現在の大阪府北中部の大半と、私が住んでいる兵庫県南東部の地域は、かって「摂津国」と呼ばれていた。その「摂津国」の名所を記した書物、今で言えば観光案内書だが、寛政8年から10年(1796~98)に刊行された「摂津名所図会」である。
そこには、我々が焼いている「一庫炭(ひとくらずみ)」についても、『名産一庫炭(ひとくらずみ) 一庫村およびこの辺山中より多く出だす。中にも当村を上品とす。 ・・・・ 多く櫟木を用ゆ。切口に菊の花形あり。』などと記載されている。そのほかにも、多太神社、多田神社、新田古城、鼓ヶ滝、多田荘平野湯、忠孝山小童寺 ・・・ など、ごくご近所に今もある史跡や名所について多数記載されている。
「月峰寺」もそんな一つで、元は「槻峯寺」と呼ばれ、戦国時代まで、能勢町の剣尾山(標高785㍍)山頂にあった廃寺である。創建時は、20を超える伽藍が配置され、隆盛を極めていたらしいが、戦国時代に焼失、その後、17世紀、山麓に「月峯寺(げっぽうじ)」として再建された。しかし、多分明治の廃仏毀釈でしょうか、再び廃寺となり、現在に至っているという。
その「槻峯寺」建立の縁が、「槻峯寺建立修行縁起絵巻」として描かれ、絵巻は明応4(1495)年、同寺に奉納された。上下2巻で縦約35センチ、横約21メートル。百済の官人、「日羅(にちら)」が「聖徳太子」から寺院建立を命じられ、適地を探すうち、光を放つ剣尾山を発見。山頂に霊木の槻の木(ケヤキ)があり、この地に決めたとする縁起を描いている。当代最高の絵師、「土佐光信」が描いたと考えられ、室町時代を代表する傑作絵巻物の一つであるが、昭和36年、米国ワシントンDCにある「フリーア美術館」の所蔵となった。同館の所蔵品は、設立者の遺言により貸し出しが一切禁じられているという。
「地元にあった絵巻を見られないのは悲しい。何とかできないか」と地元の住民有志が資金を出し合い、絵巻を最新の精密デジタル技術で、原寸大で復元した。それがやっと完成し、昨年10月に披露されたという。いや、ちょっといい話ではないか。住民たちが、地域の歴史に面白さを感じ、それが地元への愛着や活性化に結びついていく。こんな話を聞くと、やはり地元住民が主役にならなくては、活性化につながっていかないと感じる。そんな絵巻復元のニュース画像を ・・・。
「槻峯寺建立修行縁起絵巻を複製」
さて、今宵は「寺」にちなんだ曲を ・・・。「Quiet Temple」。「マル・ウォルドロン/Mal Waldron」作曲。マル自身も参加している「バルネ・ウィラン/Barney Wilen」のアルバム、「ふらんす物語/French Story」から。
「バルネ・ウィラン」といえば、「マイルス・デイヴィス/Miles Davis」に見出されたことでも有名である。1937年、フランス・ニース生れ。50年代後半、単身渡仏中の「マイルス・デイヴィス」に認められ、1958年公開の映画、「ルイ・マル/Louis Malle」監督の「死刑台のエレベーター/Ascenseur pour l'Échafaud 」のサントラ録音に抜擢された。その後、映画音楽として、ジャズを取り入れられたヌーベル・バーグ映画、「殺られる」、「彼奴らを殺せ」の音楽に参加、「危険な関係」では、サウンド・トラックの作曲を「セロニアス・モンク/Thelonious Monk」と共にした。フランスを代表するモダン・ジャズ・テナーながら、1996年5月、59歳の若さでパリで逝去してしまった。
「男と女」、「死刑台のエレベーター」、「シェルブールの雨傘」、「黒いオルフェ」などのフランス映画、もしくはフランスに関係が深い映画の名曲を、少し泣きの入った哀愁のテナー・サックスであるが、ジャズのグルーヴ感とパリの薫りで包みこんで仕立て上げたアルバムが、「ふらんす物語」(1989年録音)。「マル・ウォルドロン・クァルテット/Mal Waldron Quartet」も見事にヨーロッパの雰囲気を出している。
ふらんす物語
バルネ・ウィラン&マル・ウォルドロン・クァルテット / ポニーキャニオン
パーソネルは、Barney Wilen (ts)、Mal Waldron (p)、Stanfford James (b)、Eddie Moore (ds)。
「Barney Wilen & Mal Waldron - Quiet Temple」