今宵のピアノは、「ロベルト・オルサー/Roberto Olzer」。「Steppin'Out」(2013)を聴いて興味を持ち、「澤野工房」からの初リリース、「The Moon And The Bonfires/月と篝火(かがりび)」(2015)で魅了され、聴き始めたピアニスト。「雅びにして耽美のピアニスト」。イタリア出身のニューフェイス。
そのピアノの音の透明感が尋常ではないと感じた。「The Moon And The Bonfires」のクレジットでは、「ファツィオリ/Fazioli Grand Piano F278」を使っていると、記載されている。このピアノ、イタリアのピアニストたちが好んで使うようで、透明感が抜群なのだが、12月のコンサートでは、どのピアノを使うのだろうか? そして音色は? 期待感は高まるばかり。
「ロベルト・オルサー」。1971年、イタリアは「ドモドッソラ」生まれ。幼少の頃から、クラシックのピアノとオルガンを習い、名門「ベルディ音楽院」ではオルガンを専攻。その後、ミラノのカソリック大学では哲学を学ぶ傍ら、「エンリコ・ピエラヌンツィ/Enrico Pieranunzi」らからジャズ・ピアノを学んだという。最初のレコーディングは、セクステットで、2002~2003年に行われ、「Eveline」というタイトルでリリースされている。その後、「ユーリ・ゴロウベフ/Yuri Goloubev (doublebass)」、「マウロ・ベッジオ/Mauro Beggio (drums)」とピアノトリオを結成、2012年に、「Steppin'Out」、そして「The Moon And The Bonfires」へと続いている。
そして、ソロ・アルバム。「Esprit de Finesse - Hommage a F. Mendelssohn」(2009)。「メンデルスゾーンへのオマージュ」とサブ・タイトルが付けられているように、メンデルスゾーンの楽曲とオリジナルが約半々で構成されている。アルバム・タイトルの「Esprit de Finesse」、「西田幾多郎」によって「繊細の精神」と訳されているが、パスカルの言葉で、幾何学的精神の対概念、いわば哲学する精神のことだそうだ。メンデルスゾーンの楽曲と自分の楽曲を対比させ、内省的な思索の結果、クラシカルな響きと旋律の美しさが表出した秀逸な作品。