毎年、この時期、スコットランド、エディンバラに住む古い友人からクリスマス・カードが届く。今年の封筒を手に取ってちょっとびっくりした。消印に、「Congratulations Kazuo Ishiguro - Awarded the Nobel Prize in Literature 2017」の文字があったからである。「カズオ・イシグロ」氏のノーベル文学賞受賞を、イギリスも国を挙げてお祝いしている様が読み取れる。5歳の時に両親とイギリスに渡り帰化したという「カズオ・イシグロ」氏。日本国民の一人としても、ちょっと誇らしげでもある。
今宵は、「カズオ・イシグロ」氏が歌詞を提供している「ステイシー・ケント/Stacey Kent」のアルバムをふたたび紹介。まずは、彼女の長年の夢だったというオーケストラとの共演を実現した新アルバムの「アイ・ノウ・アイ・ドリーム/I Know I Dream」。美しいストリングス・サウンドをバックに、「アントニオ・カルロス・ジョビン/Antonio Carlos Jobim」の「ダブル・レインボウ/Double Rainbow」や「フォトグラフ/Photograph」、「セルジュ・ゲンスブール/Serge Gainsbourg」の「失われた恋/Les Amours Perdues」、「ニノ・フェレール/Nino Ferrari」の「マデュレイラ通り/La Rua Madureira」といった曲を、相変わらずのキュートな歌声で聴かせている。
特筆すべきは、今年のノーベル文学賞受賞作家、「カズオ・イシグロ」氏が再び詩を提供し、彼女のパートナーであるサックス奏者、「ジム・トムリンソン/Jim Tomlinson」が作曲していること。「市街電車で朝食を/Breakfast On The Morning Train」(2007)では、表題曲と「アイス・ホテル/The Ice Hotel」、「I Wish I Could Go Travelling Again」、「So Romantic」の4曲が収録されているが、その「The Ice Hotel」は2008年に「インターナショナル・ソングライティング・コンペティション」のジャズ部門で最優秀楽曲賞を受賞している。
「I Know I Dream」では、日本の新幹線にインスパイアされたという「バレット・トレイン(新幹線)/Bullet Train」が提供され、「The Changing Lights」がオーケストラ・バ-ジョンで収録されている。いずれの曲もそうであるが、詩の背景に深いストーリーを感じさせる。さすがノーベル文学賞受賞作家と思わせる内容である。(参照拙ブログ「わが街を代表する木、台場クヌギの大貫禄」、「カズオ・イシグロ氏とJAZZ」 など)
「♪ Your head against my shoulder 僕の肩にもたれかかる君
You falling asleep again ふたたび眠りに落ちてしまったね
Beside me on this dream train 新幹線と呼ばれている
They call it Shinkansen この夢の列車に乗っている僕の傍らで
Tokyo to Nagoya 東京から名古屋へ
Nagoya to Berlin 名古屋からベルリンへ
Sometime I feel I lose track 時々ぼくはどこを走っているのか忘れてしまう
Of just which hemisphere we're in 我々は一体地球のどこを走っているのだろうかと
And this town outside the window だから窓の外の街の景色は
Looks like the one that we just passed いま通ったばかりの街のようにも思えてしまう
They call us the bullet train 弾丸列車、そう人は呼ぶが
But it feels like we're not moving 全く動いていないような気さえする
Though I know we must be moving もちろん動いているに違いないし
Yes, I know we must be moving, 事実動いているのさ
know we must be moving, 動いているのはちゃんとわかっている
know we must be moving そう、動いているのはちゃんとわかっているさ
Pretty fast それもかなりの速さでね
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ♪」
ブルーノートへの移籍後第一弾、「市街電車で朝食を/Breakfast On The Morning Train」から「So Romantic」をアップしておきます。ステイシーの歌を聴き、詩を目で追っていると、なにか映画か小説の情景がうかんでくるようだ。
【 So Romantic 】 作詞;Kazuo Ishiguro 作曲;Jim Tomlinson
「♪ You always had a taste for those movies あなたは「カサブランカ」や
Like Casablanca and Song o' My Heart 「Song o' My Heart」のような
Where a complicated world 複雑な世界を描いた映画や
Or the call of adventure アドベンチャー映画と呼ばれる映画や
Forces true lovers to part 恋人たちが別れなければならない映画が好きだった
When the hero turns his back so stoically ヒーローがストイックに背中を見せて
On all the happiness they might have had 全ての幸せに背を向けて去るような
You always considered it あなたはそんな映画を
So romantic とてもロマンチックを思っていたようだけど
But I just considered it sad 私は悲しい映画だと感じていたの
It was so like you to choose such a moment あの時を選んだあなたはあなたらしかった
The sun setting over the square 夕暮れの広場、
A pavement cafe, the local children at play 舗道のカフェ、遊んでいる近所の子供たち
The sound of an accordion somewhere どこから聞こえてくるアコーディオン
You suddenly said あなたは突然
Fate was pulling us apart 「運命が我々を引裂こうとしている」と言った
Then you shrugged, そして他に何も付け加えることがないように
like there was nothing more to add 肩をすくめた
I suppose you considered that あなたはロマンチックだと
So romantic 思ったかもしれないが
Well, I just considered it sad 私は悲しいと思った
Perhaps you're living in America now あなたはいまアメリカで暮らしているかしら
Perhaps you're in Timbuktu それともアフリカのトンブクトゥかしら
A small part of me, even after this time わたしの一部は、こんなに時間が経っても
Has never stopped waiting for you まだあなたを待ち続けている
To live in this state of hoping 希望を持ちつづけながら生きている
When hoping seems so utterly mad 希望を持つなんてまったく馬鹿げているのに
I can't help but consider that so romantic どうしてもロマンチックに思えてしまうの
Though I know I should consider it sad 悲しいと思わなければいけないのに ♪」