さて、今宵は女性ボーカルの夏唄。最初は我が永遠のディーヴァ、「ステイシー・ケント/Stacey Kent」。ノーベル文学賞作家、「カズオ・イシグロ」氏が3曲歌詞を提供しているアルバム、「The Changing Lights」(2013)から、「The Summer We Crossed Europe in the Rain」。「カズオ・イシグロ」氏の作詞、作曲は、ステーシーのパートナーでもあるサックス奏者、「ジム・トムリンソン/Jim Tomlinson」。こんな時期に聴くのがいいでしょう、爽やかなボッサ・テイストの曲。
【 The Summer We Crossed Europe in the Rain 】
by Kazuo Ishiguo / Jim Tomlinson
「♪ You say it's the way 過ぎ去った日々は周り道だったと
these passing years have treated you あなたは言う
That the weight of the dreams 一度は思い描いた夢の重さに
you once carried has now defeated you あなたは負けてしまったのね
That our candlelit dinners キャンドルを灯したあのディナーも
will all just be reheated through もう一度温め直さなければならないの?
Our quarrels and disappointments 仲違いや失望を
just get repeated too また繰り返したいのね
Well I've packed our bags, お互い荷物はまとめ終わったわ
I know I should have consulted you そう、あなたの考えを聞くべきね
But pretending to bargain でも駆け引きをしたら
would have only insulted you 私を侮辱することと同じよ
So do just as I say, we'll go away today だから私が言うように、今日別れましょう
The fire still burns whatever you may claim どう言おうとも私の怒りは収まらないの
Let's be young again, 週末だけでも
if only for the weekend 若い頃に戻れたら
Let's be fools again, とことんやれるほど
let's fall in at the deep end もう一度馬鹿になれたら
Let's do once more all those things いままでふたりでやってきたこと全てを
we did before もう一度やってみたい
The summer we crossed Europe in the rain 雨の中、ヨーロッパを旅したあの夏を
やがて、ボサノヴァ創始者の一人であるブラジルのミュージシャン、「ジョアン・ジルベルト/」のアルバム、「Amoroso」(1977)によって取り上げられることで、世界に知られることとなった。またイタリア語歌詞に、「ジョエル・シーゲル/Joel E. Siegel」らが英語詞を付ける事によって、ジャズ・ボーカリストに好んで取り上げられることとなった。
【 Estate 】 by Bruno Martino/Bruno Brighetti/English lyrics;Joel E. Siegel
「♪ Estate エスターテ、夏
You bath me in the glow of your caresses 燃えるようなあなたの思いに溺れそう
You've turned my eager no to tender yeses 私をノーからイエスに変えてしまったあなた
You sweep away my sorrow with your sigh ため息で私の悲しみをぬぐい去ったあなた
大御所、「シャーリ-・ホーン/Shirley Horn」です。彼女の代表アルバム、「Here's to Life」(1992)から。代表するアルバムは「Here's To LIfe」と、「I Remember Miles」(1998年)であるが、このアルバム「Here's To Life」を1990年にレコーディングするに当たって、マイルスが2曲に参加することになっていたらしいが、レコーディングが実現する前に、マイルスは死んでしまい、「I Remember Miles」は、彼へのトリビュート・アルバムとしてレコーディングされたという。晩年は、乳がんと糖尿病と関節炎と闘い、脚も切断し、満身創痍の日々を送っていたが、2005年に脳卒中で倒れ、亡くなった。71歳だった。このアルバムを聴くと、彼女の71年の人生がこのアルバムに凝縮されているような思いがこみ上げててくる。