一枚のCDがある。「大石学トリオ/Manabu Ohishi Trio」の「ウィッシュ/Wish」(2010)。私と「大石学」との出会いは、ソロ・アルバム、「Water Mirror」(澤野工房 2011)。「伊藤君子」、「チャリート/Charito」、「レディ・キム/Lady Kim」、「土岐麻子」、「石野見幸」、「越智順子」などのアルバムの歌伴で、印象には残ってたが、初めてトリオ・アルバムを聴き、日本にもこんなピアノを弾く人がいるんだと感じ、それからご贔屓になって、遡って聴きだしたのが、この「Wish」。「澤野工房」の「澤野 由明」氏はライナーノーツに、こう書いている。
『私どもの企画したコンサートに伊藤君子さんに出演をお願いしたところ、彼女のパートナーとしての出演が決まったのだ。コンサート当日のリハーサル、ピアノに向かう大石さんの生音を聴いた瞬間に「僕の探してる音や!」とビビッときた。・・・・ 「私とフランスに行ってレコーディングは出来ませんか?」返事をもらう前に、頭の中は大石さんの音をどうやって録ろうかで一杯になった。そうだ!ピアノは以前ミュージシャンに薦められた「FAZIOLI」を。ベースはヴィレさんに依頼しよう。スタジオは……。次々と我侭なアイデアが浮かんでくる。かくして大石さんを無理やりパリまで引っ張って行き、このアルバムが制作された。』
「全曲を1テイクで録る」という大石の気迫がトリオと、エンジニアやスタッフの集中力を高め、入魂の一枚となっている。パーソネルは、「Manabu Ohishi : piano」、「ジャン=フィリップ・ヴィレ/Jean-Philippe Viret : bass」、「シモン・グーベル/Simon Goubert : drums」。エンジニアは、「Thomas Vingtrinier」、ピアノの調律は、「Jean-Michel Daudon」。残念ながら、YOUTUBEにアップされていないが、「澤野工房」のホームページ(
「WISH - MANABU OHISHI TRIO Atelier Sawano」)でさわりを聴くことができる。

WISH
マナブ・オオイシ・トリオ
澤野工房 大石は、「Wish」(2010)を皮切りに、「澤野工房」から、同じフランスの同じスタジオで、同じイタリアのピアノ 「Fazioli F278/ファッチオリ F278」を使用し、ソロの「Water Mirror」(2011)と、同じトリオによる録音の「Gift」(2012)、「ETERNAL」(2013)を4年続けてリリースしている。ソロ・アルバム「Water Mirror」のさわりは、同じくHP、「
WATER MIRROR マナブ・オオイシ (ピアノ・ソロ) 」で聴くことができる。

WATER MIRROR
マナブ・オオイシ/Manabu Ohishi
澤野工房 それから10年。今年1月、同じピアノ、「Fazioli F278」がある「豊洲シビックセンター・ホール」で、ソロコンサートをし、そのライブ・アルバム、「FAZIOLI F278 AGAIN」がリリースされたと知ったので、早速入手。収録曲は、新曲2曲の他、「雨音」、「Peace」、「TOSCA」など彼の代表曲と、「ひまわり」など。「この日は上から何かが降りてきて、ただ弾かされている感じでした」と彼は語っている。

FAZIOLI F278 AGAIN
大石学
北千住プロジェクト 私の貧弱な耳と再生装置では、その真髄は「ピアニッシモ」にあるという「Fazioli F278」と他のピアノとの演奏の違いは明瞭には聴き取れないが、たしかに澤野が語るように「鋭さ」と「暖かさ」、一見相反するものが両立しているような気がする。はやり、日本人の弾くピアノである。私の感性の日本人の部分に訴えかけてくる。「癒しのピアノ」と呼ぶ由縁でもある。
コロナの影響でコンサートやライブがなくなり、ミュージシャンの生活は大変だと思う。良質の音楽を我々に提供して来てくれた彼らを微力ながら支えるには、CDを買うことぐらいしかできない。
「FAZIOLI F278 AGAIN」の収録演奏もYOUTUBEにはアップされていないが、過去に、札幌市の「奥井 理(おくい みがく)ギャラリー」にて、YAMAHA C3」を使用して収録された別バージョンの演奏を参考までにアップしておきます。
「Amazing Grace ~ Peace - 大石学」 「TOSCA - 大石学」 「雨音 - 大石 学」