終戦75年。いやになるほど暑い日が続く。ご近所の家の庭では、夏休みを迎えたが、コロナ禍でどこにも行けない子供たちが、水遊びをしている。それだけ見れば、いつもと変わらない平和な夏の風景だが、今年はコロナとの戦いの真っ最中、ちょっと違って見える。
私は、終戦の翌年3月に生まれた、「戦争を知らない子供たち」第1世代である。たしかに貧しかったが、親世代と違って、文字通り「命を賭ける」という戦争体験も空襲体験なく、大学入学で地元を離れ、全共闘時代はノンポリ、そして就職、高度成長期、バブル期とその崩壊を経験し、定年を迎え、今まで過ごしてきた。その私にとって、生涯2つ目の危機体験である。一つ目は、1995年(平成7年)1月17日に発生した「阪神・淡路大震災」。二つ目が今回の「新型コロナ・パンデミック」である。「阪神・淡路大震災」は一過性というか、すぐに明日に向けて立ち上がれたが、今回はいつ終息するかもわからない、勝つか負けるかもわからない、政府の無策ぶりを見ていると、じわっとした恐ろしさを感じる。先の大戦の終戦(敗戦)の日は、「抜けるような青空で、とても暑い日だった」という。コロナとの戦いに終息宣言が出される日は、どんな思いで空を見上げるのだろうか。
終戦75年。親父が戦争体験の手記を寄せていた一冊の本、「われらかく戦えり」を読み返してみた。昭和57年(1982年)10月15日発刊、非売品。500ページを超える厚い本である。この本は、昭和11年(1936年)9月1日、海軍通信学校に入学し、12年7月29日に第44期普通科電信術練習生教程を卒業した、親父とその同期生、所謂、海軍少年電信兵、少年航空兵たち50数名の日米戦争開戦から終戦にいたる彼らの従軍手記をまとめた本である。合格率4%という狭き門を突破して入学した44期の少年達は598名、その平均年齢は16.8歳だったと記されている。そのうち三百数十名は戦死、もしくは戦争に起因する戦後死没であったことも記されていた。
父の記述には、ハワイ奇襲に向かう第1艦隊とは別に、南方方面へ向かう第2艦隊司令部、旗艦「愛宕」に乗船し、英国戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」、「レパルス」と戦ったマレー沖海戦の模様が記されており、その後、スラバヤ沖海戦、ミッドウェー海戦、南太平洋海戦、ソロモン海戦等、南太平洋における殆どの海戦に参加した後、昭和18年8月に船を降り、横須賀通信学校の電探(レーダー)教員となって終戦を迎えた経歴も記されていた。
父が去った後、第2艦隊旗艦「愛宕」は、昭和19年10月22日、ブルネイを出航、レイテ島へ向かう途中、米潜水艦「ダーター」に捕捉され、放たれた6本 の魚雷のうち4本が右舷に命中、転覆、沈没した。
この本を読むと国家や軍の指導者達の主義主張、イデオロギーや大義とは無関係に、ただただ「祖国のために」と純粋に戦っていた少年達の姿が浮き彫りになってくる。敗戦、占領、軍事的独立を放棄した代償として他国の基地があるがゆえの理不尽、不条理は75年経てもなお解消できそうもない。
終戦75年。読んだ本、2冊。「猪瀬直樹」著、「昭和16年夏の敗戦」。「日本必敗」。これが日米開戦前夜、「総力戦研究所」の若きエリートからなる模擬内閣が出した結論だった。にもかかわらず、日本が開戦へと突き進んだのはなぜか。客観的な分析を無視し、無謀な戦争へと突入したプロセスを克明に描き、日本的組織の構造的欠陥を衝く。今回の新版発刊(2020年6月)に際して、猪瀬は、巻末に「我われの歴史意識が試されている ~ あとがきにかえて」という一文を付け加え、コロナとの戦いの政策決定のプロセスにおける不透明さに対し、「政治的リーダーの役割は、数値目標を示しながら、みずからの言葉で国民に説明し協力を求めることなのだ。 ・・・・ 東日本大震災、新型コロナウィルスの蔓延。現在のあやまちが過去のあやまちと相似形に重なってはいないか、いまこそ我われの歴史意識が試されている」と結んでいる。
昭和16年夏の敗戦 新版 (中公文庫) 猪瀬直樹 (著) 中央公論新社 私の好きな著述家、「半藤一利」の「世界史の中の昭和史」。いままでフォーカスしていた幕末から昭和に至る国内史からズーム・アウトし、昭和史を世界視点で見ると何がわかるのか。アジアの小さな「持たざる」島国が、欧米列強の政略や戦略に翻弄された歴史を、世界史の視野から、現代の視点で、時系列で辿る、「半藤昭和史三部作」完結編である。コロナが中国の脅威、米国の機能不全を浮き彫りにした。その中で日本の立ち位置、東アジアでのリーダーシップを確立できるのだろうか。
世界史のなかの昭和史 (平凡社ライブラリー) 半藤 一利 (著) 平凡社 この2作を読んで、やや暗鬱な気持ちになってしまった。こんな時はラテンです。「キャロル・ウェルスマン/Carol Welsman」の最新作、「Dance with Me」(2020)を聴いています。ラテン・ジャズ界の雄、「オスカー・へルナンデス(オスカル・エルナンデス)/Oscar Hernandez」、そしてトロピカル・ラテンの至宝、「ファン・ルイス・ゲーラ/Juan Luis Guerra」といった、グラミー賞受賞者など、ラテンのトップ・プレイヤー達と織りなすJAZZYなアルバム。 タイトル曲の「Dance with Me」は、「ドミニカの歌う英雄」と称される「ファン・ルイス・ゲーラ」のオリジナルで、キャロルとデュオ。
ダンス・ウィズ・ミー ~キャロル・シングス・ラティーナ/Dance with Me キャロル・ウェルスマン/Carol Welsman MUZAK/fab. 「CAROL WELSMAN DANCE WITH ME - PMビデオ」 VIDEO 「Dance with Me - Carol Welsman&Juan Luis Guerra」 VIDEO