突然、腰を痛め、ここ2週間ほどウォーキングも山仕事もできないでいる。医者の診断は、「加齢による変形性脊椎症」ということで、総合病院でのMRI検査など、病院通いが始まったところ。歩行が困難なので、おふくろが残した杖を突いて歩いている。
年季の入ったこの杖、おふくろが、大腿骨骨折後、一人で暮らすと決意し、リハビリに励み、寝たきりになるまで離さなかった杖。結局、形見となってしまったが、実家から持ってきたこの杖に今、世話になっている。
上半身と左足は全く問題ないので、幸いなことに車の運転はできるし、何とか妻の手を借りながらも、日常生活はこなしているが、予期せぬ再びの「Stay Home」。今後の治療や回復に心配はあるが、今は精密検査による診断待ち。サブスク、音楽三昧の生活が続きそう。
自分の身に降りかかってはじめてわかるというが、階段、坂、ちょっとした段差などの歩行が、これほど困難だと初めて実感した。そして、バリアフリーの必要も。人は誰でも皆、こうして老いてゆくのだというとも ・・・。
今宵は、イタリアン・ジャズの巨匠、「エンリコ・ピエラヌンツィ/Enrico Pieranunzi」。もうこの巨匠とも25年ほどの付き合いになろうか。
「エンリコ・ピエラヌンツィ」は1949年、ローマ生まれ。5歳でピアノを始め、10代後半に伊・フロジオーネ音楽院で作曲とピアノ学位を取得した後、ジャズに関心を抱き19歳でプロ入り。'80年アート・ファーマーとの共演で世界的知名度を上げると、以後はヨーロッパやアメリカの多数著名アーティストと共演し、国内外で自身のトリオを持つなどベテラン・ピアニストとしての地位を不動のものにしていく。
多作でも知られ、彼のオリジナル作品ほとんどとなるアルバムをこれまでに、リーダー・アルバムだけでも70枚以上もリリースしている。
71歳になる今年もその音楽的エネルギーは衰えを知らず、最新のアルバムでも、ピアノトリオに、ボーカルとヴィブラホンを加えたカルテット仕立てと、新しいサウンドや試みに挑戦している。以て見習うべきか。最新アルバムのタイトルは、「Time's Passage 」、「時の回廊」とでも訳しましょうか。
ライナーノーツにこんな彼の言葉があった。「時って奴は奇妙な奴さ。一つの顔だけでなく、言葉では言い表せないような、ひょっとすると計り知れないような多くの顔を持っているんだ。でも、きっといい奴に違いないさ。さあ、楽しもう!」 アルバムがリリースされたのが今年の9月。コロナ禍に苦しんだイタリア、世界への応援のメッセージにも聞こえる。
この最新アルバムは、「エンリコ・ピエラヌンツィ」のトリオ、「アンドレ・チェッカレ/Andrè Ceccarelli(drums)」、「ルカ・ブルガレッリ/Luca Bulgarelli(bass)に加えて、ヨーロッパの「ゲイリー・バートン/Gary Burton」こと、ヴィブラホンの「アンドレア・ダルベッコ/Andrea Dulbecco」、2012年からコラボをスタートさせ、2016年には、エンリコの曲に詩をつけたコラボ・アルバム、「My Songbook (feat. Simona Severini)」をリリースしているボーカルの「シモーナ・セヴェリーニ/Simona Severini」を参加させ、カルテットでのアルバムである。
エンリコとシモーナのコラボ・アルバムは初めて聞くが、さらにヴィブラホンをフューチャーしたことで、重々しさが消え、みずみずしい若々しさと軽やかさがあふれ、いままで聴いたことのないピエラヌンツィの世界が広がっていた。
Time's Passage
Enrico Pieranunzi Jazz Ensemble
Abeat タイトル曲から ・・・。
「Time's Passage - Enrico Pieranunzi · Andrea Dulbecco · Simona Severini」 フランスの詩人アポリネールへのワルツ。
「Valse pour apollinaire - Enrico Pieranunzi · Andrea Dulbecco · Simona Severini」 スタンダードの「In the Wee Small Hours of the Morning」。カルテット・バージョンとピアノ&ボーカルバージョンで。
「In the Wee Small Hours of the Morning (Ensemble Version) - Enrico Pieranunzi · Andrea Dulbecco · Simona Severini」 「In the Wee Small Hours of the Morning (Piano and Voice) - Enrico Pieranunzi · Simona Severini」