イタリア出身、現在はパリ在住の「ジョバンニ・ミラバッシ/Giovanni Mirabassi」の最新作、ソロ・ピアノ・アルバム、「ペンシエリ・イゾラティ/Pensées isolées」を聴いた。2001年にリリースされたソロ・アルバム「AVANTI!」以来のご贔屓ピアニストである。ライナーノーツによると、2020年春、ヨーロッパで新型コロナウィルスの感染拡大が猛威を振るい始めた頃、ジョバンニは50歳の誕生日をモンマルトルの自宅で迎えた。予定されていたツアーはすべてキャンセルされ、見慣れたよく知る世界が終わりを迎えたように感じられたという。
彼自身の言葉で、「私はこの時空のギャ ップを利用して、親密なメロディの記録を作りました。自分で作曲したものもあれば、そうでないものもあり、まるで私の音楽的青春を回顧するかのようでした。 心ではなく、アルゴリズムに作品の正当性を納得させなければならない日が来るとは、誰も想像していませんでした。しかし、芸術は流れに乗って進んでいくものです。歴史の囚人である我々は、鏡という単純な効果によって、我々の時代のことを伝えます。だから、私はできる限り、今の時代を 演奏しました。私たち人間のために、私の子供たちのために、他の人の子供たちのために、私の話を聞いてくれるすべての人たちのために。選んで聴いてくれる人たち、あるいは偶然に耳にする人たち、ある日耳にして、好きになってくれないかもしれないし、BGMでかかっているこのピアノ曲集に注意を払ってくれないかもしれない人たちのためにも。私は毎週、自分の孤独を録音して、明日のためにとっておく作業を繰り返しました。明日のために、世間の喧騒に支配されたときのために。時間と空間の中で止まっている”
孤立した思考(Pensieri irorati)”。」とライナーノーツに語られている。
繰り返しやって来るパンデミック、コロナ禍。「リー・コニッツ/Lee Konitz」、「エリス・マルサリス/Ellis Marsalis」、「バッキー・ピザレリ/Bucky Pizzarelli」、「ウォレス・ルーニー/Wallace Roney」などコロナで命を落としたジャズ・アーティストたち(拙ブログ
「コロナに倒れたジャズのレジェンドたち」)。イタリア北部クレモナの街で、鐘楼トラッツォの上や、患者への治療の最前線となっている病院の屋上で演奏し、その映像の配信が全世界を勇気づけた日本人バイオリニスト「横山令奈」。(拙ブログ
「とどけ! 祈りの響き」、
「クレモナのバイオリニスト」)
コンサートが軒並み中止となり表現の場を失なったアーティストたち。動画配信など新たな伝達手段を模索しだした、「小曽根真」、「asobiyoshi(あそびよし)」などのアーティストたち。(拙ブログ
「路傍の花、樹々の鳥(423) ~ 雑草という名の草はない ~」、
「スタンダードの斬新なアレンジがいい」 )。そんな新たな活動もこのブログで取り上げてきた。
また、表現の場を失い、思索し、自己の音楽を見つめ直した結果、リリースされたアルバム、「小曽根真/OZONE 60」、「上原ひろみ/Silver Lining Suite」、「大石学/Manabu Ohishi Solo Piano」、「フレッド・ハーシュ(Fred Hersch)/Songs From Home」、「サシャル・ヴァサンダーニ&ローマン・コリン(Sachal Vasandani & Romain Collin)/Midnight Shelter」、「エリン・ボーディー(Erin Bode)/Your Song」なども紹介した。
新型コロナのパンデミック。それは、アーティストたちの内省的思索を促し、それが凝縮され、いろいろな形で発露してきている。コロナは、決して悪い面ばかりではなかったのかもしれない。パンデミックで音楽の世界が加速度的に変わるような予感 ・・・。きっとそれは、「音楽のチカラ」であろう。
そして、「ジョバンニ・ミラバッシ」の新作ソロ、「ペンシエリ・イゾラティ/Pensées isolées」である。まさに「孤立した思考」と名付けられた内省的な作品集である。そのことは、グランド・ピアノをデフォルメし、外形を描く線が中心のピアノへ向かって、沈み込みながら収斂していくという、シュールなジャケット・カバーからもうかがえる。一聴、彼との出会いの名盤、「AVANTI!」に次ぐソロ・アルバムではという思いが湧きあがった。
ペンシエリ・イゾラティ/Pensées isolées
ジョバンニ・ミラバッシ/Giovanni Mirabassi
MOCLOUD/JAZZ ELEVEN まず、プロモーション・ビデオから。
「Un Peu comme cette époque | Giovanni Mirabassi - PENSIERI ISOLATI」「PENSIERI ISOLATI PROJECT | Giovanni Mirabassi - "J'ai demandé au public de créer avec moi"」 アルバムから、「The Healing waltz」と「Canta che ti passa」を。
「The Healing Waltz - Giovanni Mirabassi」 「Canta che ti passa - Giovanni Mirabassi」