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大屋地爵士のJAZZYな生活

炭焼きに生涯を捧げた”銀爺い”の訃報

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 1月に「杉浦銀治」氏がお亡くなりになったという知らせ。「杉浦銀治」と言っても一般の人には馴染みがない人でしょう。私も、会ったこともなく、ましてや、お話しをしたこともありません。しかし、「炭焼き」を通じて、不思議な縁でつながっていたのです。

 10年前、森林ボランティアクラブをたちあげて、公園の主たる行事でもある「菊炭焼き」の技術の伝承を引き受けました。立ち上げる前に所属していたクラブでも、炭焼きを経験していたので、多少のノウハウは知っていた。しかし、引き受けた後の最初の炭焼きの出来栄えは、「菊炭」とは程遠く、到底満足できるものではなく、文化・技術の伝承という大きな目的を前に、頭を抱えたものでした。

 そんなときに、私の眼を見開かせてくれた一冊の本に出合いました。それが、岸本定吉、杉浦銀治、両氏の著書、「日曜炭焼き師入門」(総合科学出版2012年刊)。そこには、炭焼きの原理、炭窯の機能、炭が焼けるまでの工程 ・・・などが丁寧に書かれていました。「これだ!」と思い、次の炭焼きからはこの本を参考にして、ノウハウを積み上げはじめ、クラブ員の誰もが、何とか「菊炭」をそこその出来栄えで焼けるようなレベルに到達できました。この本には本当に感謝しています。


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 大人の週末遊び 日曜炭やき師入門 完全改訂版
 岸本 定吉 , 杉浦 銀治 (著)
 総合科学出版










 そして、ここ最近の何年か、85歳というご高齢ながら、電車とバスを乗り継ぎ、さらに30分歩いて、我々の炭焼きの最後の工程、「窯出し」の時に出来栄えを、毎年見に来てくれる方がいます。Nさん。私も知らなかったのですが、公園の職員で見知った方がいて、公園がオープンして、炭焼きを始めた20年ほど前、先輩たちが炭窯の建造から炭の焼き方まで、ご指導を頂いた方だと知った。しかも、Nさんに聞くと、Nさんの炭焼きの師匠が「杉浦銀治」氏というのです。不思議な因縁 ・・・。「素晴らしい出来の菊炭。もう私が教えることなどない。」と言いながらも、今年も見届けていただいたNさんから「杉浦銀治」氏の訃報を聞きました。96歳の大往生。

 思えば、「日曜炭焼き師入門」を通じ、Nさんを通じて繋がるご縁のある、我々の炭焼きの師匠でもあったのです。森林総合研究所で、製炭の研究や後輩の育成に情熱を注ぎ、その人柄は「銀爺い」と呼ばれ。平成25年には「吉川英治文化賞」を受賞したという。

 一面識もない我々だが、今年焼けた「菊炭」を捧げ、悼むことにしよう。 合掌 ・・・・。


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 一生を炭焼きの伝道に捧げた「炭爺い」に捧げる今宵の曲、「伝道師」という意味の「The Preacher」。「ホレス・シルヴァー/Horace Silver」作曲のファンキー・ジャズ。オルガン・マスターの「ジミー・スミス/Jimmy Smith」の演奏で、アルバム、そのタイトルも「師匠」という意味の「The Master」(1994)から。
  
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 ザ・マスター
 ジミー・スミス
 ユニバーサルミュージック





   
 同じバージョンではありませんが、「The Preacher」を「Jimmy Smith」で。 

「Jimmy Smith - The Preacher」

     




   

by knakano0311 | 2022-03-06 00:00 | 訃報を聞いて | Comments(0)
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