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大屋地爵士のJAZZYな生活

4000Hzの壁の向こう側は ・・・

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 「みつなかホール」では、すっかりおなじみになった「小曽根真」のソロ・ライヴ、2年ぶりである。2021年に還暦、60歳を迎え、「OZONE60」と名付けた全国コンサート・ツアーの一環で、タイトルは「小曽根 真 60th Birthday Solo OZONE60 Classic×Jazz」。3月6日(日)、午後3時開演である。

 前回も書いたように、ここ1、2カ月、「老人性難聴」が進行して、自覚できるほど聴こえる音質が変わってしまった。その症状で、音楽の感動や喜びを得られるだろかという、多少の不安を抱えながらも、4000Hzの音の壁の向こう側の「小曾根真」を聴いてみようと、「みつなかホール」に出かけた。

 「みつなかホール」。我が街、川西市にある500席ほどの中規模コンサートホール。そこでの「小曽根 真」のピアノ・ソロ・コンサートである。全国ツアーであるが、多分、ほかの場所でのコンサートと違うのは、ゲストが「小曽根 啓(ひろし)」、実弟のジャズ・サクソフォン奏者である。2年前の、父親の「小曽根実」氏を偲ぶ、自分語りのソロ・コンサートでも、ゲストとして登場した。(拙ブログ「小曽根真、自分語りのコンサート」) 今回も、第2部のほとんどは、彼とのデュオであった。そして、小曽根の弾くピアノは、「スタインウェイ/Steinway & Sons D-274」。
    

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 最初は難聴のいたずらか、ちょっと違和感があったが、すぐに感じなくなった。とはいえ、聴衆の皆さんに響いていた音とはちょっと違っていたであろうと思う。「ヘンリー・マンシーニ/Henry Mancini」の「Sometimes」で演奏が始まり、「ジョビン」の「So Danco Samba」、小曽根のオリジナルの4曲へと続いてゆく。ピアノのタッチも、トリルも、グリッサンドも変わらぬ小曽根のピアノに聴こえた。5曲目の「耳をすませて・・・/Listen」の演奏前後の無音、静寂 ・・・、4000Hzの壁など関係なく心に響く。
  
 第2部は、クラシックのソロで、ラベルのピアノ・コンチェルトから。そして、実弟、サックス奏者、「小曽根啓」とのデュオが始まる。よく響く彼のサックスである。ピアノはもちろん、MCのほかは一切マイクなし。客席の隅々まで音が届いている感じ。「小曽根啓」のオリジナル曲を挟んで、ラスト曲、「ジーン・デ・ポール/Gene de Paul」の「I’ll remember April 1st」へとなだれ込む。
 
 ここまでくると、壁など関係なく音がやって来る。壁を超えさせたのは、響きの良さで定評のある「みつなかホール」の音響か、スタインウェイの響きの良さか、小曽根の技量か・・・。いや、彼、彼らの音楽への熱量であろう。
  
 アンコールは、アフガニスタンの復興に生涯をかけ、2019年に命を落とした「中村哲」医師の言葉にインスパイアされたという曲、「誰かのために」をソロで。そして、ウクライナの人々に贈るといって、デュオで奏でたのは、彼がジャズ・ピアノを志すきっかけとなった「オスカー・ピーターソン/Oscar Peterson」の曲、「Hymn To Freedom/自由への讃歌」。ここまでくると、もう壁は完全に崩れ去っていた。そして、客席では、スタンディング・オベーションが鳴りやまなかった。「音楽のチカラ」。
  
 すべての演奏が終わった無人のステージ。バックには、ウクライナの国旗の色で彩られたコンサート・ツアーのロゴが映し出されていた。今日ここでしか聞くことができなかった物語。


第1部
① ヘンリー・マンシーニ/Henry Mancini:Sometimes
② アントニオ・カルロス・ジョビン/A.C.Jobim: So Danco Samba
③ 小曽根真/Makoto Ozone: Gotta Be Happy
④ 小曽根真/Makoto Ozone: Struttin’ in Kitano
⑤ 小曽根真/Makoto Ozone: 耳をすませて・・・/Listen
⑥ 小曽根真/Makoto Ozone: O’berek(オベレク)

第2部
① ラベル/Ravel: Piano Concerto in G Major, 2nd movement
② ジェローム・カーン&オスカーハマーシュタインⅡ/
   Jerome Kern/Oscar Hammerstein Ⅱ:All the Things You are(feat.小曽根啓)
③ 小曽根啓/Hiroshi Ozone: Back Street(feat.小曽根啓)
④ 小曽根啓/Hiroshi Ozone: Madam Leo(feat.小曽根啓)
⑤ ジーン・デ・ポール/Gene de Paul: I’ll remember April 1st(feat.小曽根啓)

アンコール
① 小曽根真/Makoto Ozone: 誰かのために/For Someone
② オスカー・ピーターソン/Oscar Peterson: Hymn to Freedom(feat.小曽根啓)


 この日演奏された曲は、「小曽根啓」作曲の2曲、アンコール曲1曲を除いて、60歳記念ソロ・ピアノ・アルバム、「OZONE 60(SHM-CD2枚組)」(2021)と、そのレコーディングン最終日に、同じ「水戸芸術館 コンサートホールATM」で、「スタインウェイD型」と「ヤマハCFX」という2台のグランドピアノを、曲により弾き分けて録音したスタンダード・ナンバー集、「OZONE 60 -STANDARDS- (SHM-CD)」に収録されている。その中から、YOUTUBEにアップされている「Gotta Be Happy」、「プロコフィエフ/Prokofiev: Piano Sonata No. 7」を ・・・。


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 OZONE 60 (2SHM-CD)
 小曽根真
 Universal Music







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 OZONE 60 -STANDARDS- (SHM-CD)
 小曽根真
 Universal Music







「Gotta Be Happy - Makoto Ozone」

     


「Prokofiev: Piano Sonata No. 7 In B-Flat Major, Op. 83: 3. Precipitato - Makoto Ozone」



 スタンディング・オベーションが鳴りやまなかった、「自由への賛歌/Hymn To Freedom」のライブを、YOUTUBEから。ちなみに「Hymn To Freedom /自由への賛歌」は、アルバム、「バラード/Ballads」(2008)に収録されている。

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 バラード/Ballads
 Makoto Ozone/小曽根真
 ユニバーサル ミュージック クラシック




  

   
「小曽根真/Makoto Ozone - 自由への賛歌/Hymn To Freedom(Oscar Peterson) 」



by knakano0311 | 2022-03-08 00:00 | 音楽のチカラ | Comments(4)
Commented by photofloyd at 2022-03-08 11:26
小曽根 真 生のコンサートいいですねぇー-、羨ましいです。
 ちょっと老人性難聴の傾向とか・・・
 人間の聴覚は、単に耳の鼓膜だけでなく、体で感ずる音、そして骨導の響きなど総合されてのもののようですから、おそらくマイクなしのスタンウェイのピアノの響きが体に伝わられたのではないでしょうか。 
 やはり音の良さあっての音楽ですから、私はこの彼のアルバムは、e-onkyoからMQAハイレゾをダウンロードしたデータで聴いています。幸いに私は老人特有の高音域の障害はありません。
 クラシック領域の方に私はむしろ感動しました。ジャズ領域は私にとって難しいところもありましたね。
 (ところで、難聴の件ですが、4000ヘルツの障害は、確かC5-dipといって、騒音性難聴かとも思いますが・・・)
リンクさせてください ↓
http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2021/10/post-ad139b.html
Commented by knakano0311 at 2022-03-08 14:36
> photofloydさん  
前から検査では4000ヘルツの難聴と言われていたのですが、年が明けてから、どうも顕著になったようです。はやり気になるので、目下のところ、ヘッドフォンとイコライザーで何とか補っているところです。
リンクはOKですが、何か私の方で操作が必要ですか? したことがないのでどうしたらいいのか??
Commented by photofloyd at 2022-03-08 19:47
追加してメールいたします
難聴の件ですが・・・大きな音の中での仕事とか、そんなことはありませんでしたか(山などでの作業など)、それによる騒音性難聴(4000ヘルツが特異的に下がる。老人性とは違うもの)なら早期治療で効果はありそうですが・・・
 リンクは記載したところに行って、繋がって見ていただきたいということでして・・コメント欄に書くことをお許しくださいということだけです。よろしくお願いします。
Commented by knakano0311 at 2022-03-08 23:21
> photofloydさん
大きな音の中での仕事は思い当たらないので、やはり老人性ではないかと思います。
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