「アンディ・ウィアー/Andy Weir」の新作、「火星の人/原題;The Martian」、「アルテミス/原題;Artemis A Novel」に次ぐ長篇第3作、「プロジェクト・ヘイル・メアリー/原題;Project Hail Mary」を読んだ。面白く、またしても一気読みである。本書は、2021年アメリカで刊行されるとすぐにベストセラーになり、MGM製作、「ライアン・ゴズリング/Ryan Gosling」主演で映画化が進行しているという。
未知の地球外生命体アストロファージ。これこそが太陽エネルギーを食べて減少させ、地球の全生命を絶滅の危機に追いやっていたものの正体だった。地球上の全生命滅亡まで30年・・・。人類の英知を結集した「プロジェクト・ヘイル・メアリー」の目的は、ほかの恒星が光量を減少させるなか、唯一、アストロファージに感染していないタウ・セチに赴き、その理由を探し出すこと。遠く宇宙に向けて最後の希望となるべく放たれた恒星間宇宙船、ヘイル・メアリー号。たったひとりでこの不可能ミッションに挑み、人類滅亡の危機に立ち向かう男、「ライランド・グレース」を描いたファースト・コンタクトSFのエンターテインメント。
私がこの作家、「アンディ・ウィアー」に興味を持ったのは、大変面白かった、監督・製作「リドリー・スコット/Sir Ridley Scott」、「マット・デイモン/Matt Damon」主演のSF映画「オデッセイ/原題: The Martian」(2015)の原作「火星の人」の作者と知ったからである。
「アンディ・ウィアー」。1972年6月、カリフォルニアに素粒子物理学者でエンジニアの息子として生まれた。宇宙開発に強い関心を寄せ、作家志望だったウィアーが初めて書いた小説が「火星の人」である。まず自らのウェブサイトに公開され、その後Kindle版、紙版が発売され、世界的なベストセラーとなった。映画も世界中で大ヒットを記録した。
「ビートルズ/The Beatles」のファンらしく、「プロジェクト・ヘイル・メアリー」の見開きには、「ジョン、ポール、ジョージ、リンゴに」と献辞が書かれ、作中には「これは帰るあてのない特攻ミッションだ。ジョン、ポール、ジョージ、リンゴは家に帰るが、ぼくの長く曲がりくねった道(ロング・アンド・ワインディング・ロード)はここで終わる ・・・(小野田和子 訳)」という記述のほか、宇宙船ヘイル・メアリー号の先端は「ビートルズ」と名付けられている。
プロジェクト・ヘイル・メアリー 上/下 アンディ・ウィアー (著), 小野田和子 (翻訳) 早川書房 まずは、「The Long and Winding Road」。「スティーブ・ドブロゴス/Steve Dobrogosz」のピアノ・ソロ・アルバム、「Golden Slumbers (plays Lennon/McCartney)」(2009)から。
ゴールデン・スランバー /Golden Slumbers (plays Lennon/McCartney) スティーブ・ドブロゴス/ Steve Dobrogosz ボンバ・レコード 「The Long and Winding Road - Steve Dobrogosz」 映画「オデッセイ」の原作、「火星の人」。 有人火星探査が開始されて3度目のミッションは、猛烈な砂嵐によりわずか6日目にして中止を余儀なくされた。火星を離脱する寸前、折れたアンテナがクルーの「マーク・ワトニー」を直撃、彼は不毛の惑星に一人残された。限られた食料・物資、自らの技術・知識を駆使して生き延びていく。
火星の人〔新版〕(上)(下) (ハヤカワ文庫SF) アンディ・ウィアー (著), 小野田和子 (翻訳) 早川書房 オデッセイ [AmazonDVDコレクション] 監督・製作:リドリー・スコット 出演:マット・デイモン ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 第2作の舞台は、人類初の月面都市「アルテミス」。直径500メートルのスペースに建造された5つのドームに2000人の住民が生活するこの都市で、合法/非合法の品物を運ぶポーターとして暮らす主人公のアラブ系女性、「ジャズ・バシャラ」は、大物実業家のトロンドから謎の仕事の依頼を受ける。それは都市の未来を左右する陰謀へと繋がっていた。「火星の人」で極限状態のサバイバルを描いた作者が、舞台を月に移して地球の1/6の重力下での月面版「ミッション・インポッシブル」ともいえるサスペンスSF。本書も20世紀フォックスで映画化されることが決定してるという
アルテミス(上/下) (ハヤカワ文庫SF) アンディ・ウィアー (著), 小野田和子 (翻訳) 早川書房 第1作、3作に共通するキーワードは、一人取り残された主人公の「孤独との闘い」と「サバイバル」。そこで、今宵の曲は、「Left Alone」をピックアップ。
1958年に、ジャズ・ヴォーカル史上最高の女性歌手といわれた「ビリー・ホリディ/Bilie Holiday」と彼女のピアノ伴奏者をつとめた「マル・ウォルドロン/Mal Waldron」によって書かれた曲。ビリーが他界する1年前に書かれた曲で、彼女の遺作となった曲である。ビリーはこの曲を気に入り、最晩年ステージでも歌っていたというが、残念ながら彼女自身の録音は残されていない。それが故に、この曲は「伝説の曲」となった。
マルはビリーに捧げてアルバム「Left Alone」(1959)を録音。ビリーのバラードの雰囲気に感じが似ているからと、アルト・サックス奏者「ジャッキー・マクリーン/Jackie McLean」を起用し、その切々たる響き、痛切な情感の表現は、マクリーンの名演奏としても高く評価されている。
「マル・ウォルドロン」、1925年生まれ。「Left Alone」の最初の吹き込みは、当時35歳であった。ビリーが亡くなって42年後、2002年、76歳。この年2月にパリで録音されたアルバムが、「追憶 ~ レフト・アローン/Left Alone Revisited」。そしてこの演奏を最後にしてこの年の12月、ベルギーのブリュッセルで亡くなってしまった。77歳。その最後の「Left Alone」の演奏に選んだパートナーは「アーチー・シェップ/Archie Shepp」。アルバム、「Left Alone Revisited: A Tribute to Billie Holiday」(2005)
「アーチー・シェップ」。1937年生まれ。録音時は65歳、現在85歳。2004年には、自身のレーベル「Archie Ball」を発足させ、まだ現役で活躍中とか。冒頭、マル自身による「Left Alone」の詩の朗読があり、ゆっくりとした噛み締めるようなシェップのサックスが流れ出す。透明感があるマルのピアノが絡み、「レディ・デイ/Lady Day」と呼ばれたのビリーの歌を今に蘇らせる。やや湿度が高く、感傷的に流れた感じがある「マル・ウォルドロン+ジャッキー・マクリーン」バージョンに比べ、かつて前衛派でならした二人が人生の重みを感じさせる枯れた枯淡の味わいが印象的。年老いた二人、魂のこもったプレイが胸を揺らす。聴き比べてみますか。「Left Alone」。
レフト・アローン +6 (日本独自企画盤) マル・ウォルドロン SOLID/BETHLEHEM Left Alone Revisited アーチー・シェップ,マル・ウォルドロン Enja 「Left Alone - Mal Waldron」 VIDEO 「Left Alone - Archie Shepp & Mal Waldron」 ビリーはこの曲「レフト・アローン」の録音を残さなかったので、伝説となったが、女性ボーカルのカバーがいくつかあります。
【 Left Alone 】 lyrics by Billy Holiday Music by Mal Waldron
「♪ Where's the love that's made to fill my heart 私の心を満たす愛はどこにあるの
where's the one from whom I'll never part 決して別れないと思った彼は何処
first they hurt me, then desert me 皆んな私を傷つけては去っていく
I'm left alone, all alone 私は残され たったひとり
There's no house that I can call my home ホームと呼べる家もなく
there's no place from where I'll never roam もう彷徨わなくてもいい場所もなく
town or city, it's a pity 街でも都会でも 惨めなだけ
I'm left alone, all alone 私は残され いつもひとり
Seek and find they always say 求めれば得られると人は言う
but up to now, it's not that way しかし今でもそれはないものねだり
Maybe fate has let him pass me by 彼が去っていったのは運命かも知れない
or perhaps we'll meet before I die でも私が死ぬ前にもう一度会えるだろうか
hearts will open but until then 彼に会えればきっとお互の心は開かれる
I'm left alone, all alone それまではたったひとり ひとりぼっち ♪」
スペインのジャズ・シンガー、「カルメ・カネラ/Carme Canela」、米国ボストン育ちの「レディ・キム/Lady Kim」の歌唱は、何回か取り上げていますので、今宵は、円熟の魅力、NY在住のイギリス人歌手、「テッサ・ソーター/Tessa Souter」と、アメリカの現代ジャズシンガー、ソングライター、プロデューサー、アレンジャー、劇作家、女優というマルチな才能の「スウィート・ベイビー・ジェイ/Sweet Baby J'ai」の歌唱を ・・・。
「テッサ・ソーター」は、アルバム、「Listen Love」(2005)から。
Listen Love テッサ・ソーター Nara 「Left Alone - Tessa Souter」 「スウィート・ベイビー・ジェイ/Sweet Baby J'ai」は「The Art Of Blue」(1998)から。
Art of Blue Sweet Baby J'ai CD Baby 「Left Alone - Sweet Baby J'ai」 YOUTUBEを見ていたら、なんと「笠井紀美子」が「マル・ウォルドロン」と吹き込んでいました。アルバム、「One For Lady」(1971)から。
ワン・フォー・レディ (紙ジャケット仕様) マル・ウォルドロン , 笠井紀美子 ビクター・エンタテインメント 「Kimiko Kasai & Mal Waldron - Left Alone」