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大屋地爵士のJAZZYな生活

年始年末に読んだ本から(1) ~ コード・ブレーカー ~

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 年始年末に読んだ本の中で、一番にあげるのは、世界的ベストセラーとなった「スティーブ・ジョブズ/Steve Jobs」の評伝作家、「ウォルター・アイザックソン/Walter Isaacson」による最新作、「コード・ブレーカー/The Code Breaker」である。日本語版で上巻336ページ、下巻360ページの700ページ近い大著であったが、一気に読み終えた。

 「mRNAワクチン」を開発、新型コロナ・ウイルスを克服したように思える人類。「mRNAワクチン」は、今回のコロナで実証されたように、巨大市場、巨大産業創出へのビジネスとしての期待が高まっている。だがその一方で、「プーチン」は「恐れを知らぬ兵士がつくれる」と予言していたというし、ゲノム編集された赤ちゃんが中国で誕生するというSF的世界も現出するという可能性が現実味を帯びてきている。

 本書は、「クリスパー・キャス9」というDNAを書き換える技術を開発し、2020年にノーベル化学賞を受賞したアメリカの女性科学者「ジェニファー・ダウドナ/Jennifer Doudna」が主人公のノンフィクションである。

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 コード・ブレーカー (上・下)
  生命科学革命と人類の未来
 ウォルター・アイザックソン (著)
 西村 美佐子 , 野中 香方子 (翻訳)
 文藝春秋



  





 「ジェニファー・ダウドナ」。彼女を主軸に展開する「生命科学の革命」とも言える「ゲノム編集」の技術開発の話である。優れた科学者がたくさん登場するが、彼らの人間性、情熱、研究姿勢なども描かれる一方、この技術は、起業化したら莫大な利益と名誉を生むため、資金、権利争いなどで、ときに密接な協力関係を結んだり、ときには敵対して熾烈な競争を繰り広げる様が描かれている。
   
 そして下巻では、遺伝暗号を書き換えるゲノム編集技術にまつわる倫理的な問題に著者は踏み込んでゆく。「モラルの問題」と題された第7部では、この倫理的問題を考えるため論点として、2018年、世界で初めて遺伝子編集ベビーの誕生を発表し、その代償として、キャリアを失い、投獄され自由をも失う結果となった。中国の生物物理学者の「フー・ジェンクイ/賀建奎(当時は南方科技大学の准教授)」などの例もあげているが、肯定否定どちらか一方に傾いているわけではない。ただ「神の領域まで踏み込んだ」あるいは「自然に反する」から使ってはならないという論法には、アイザックソンは否定的のようだ。しかし、ゲノム編集技術を野放しにしていいかどうかについては、「ノー」とはっきりしている。

 こんな記述も ・・・。

  「マイルス・デイヴィス」も「鎌状赤血球貧血症」を発症しており、その痛みから逃れようと、麻薬と酒に走った。この病気は、彼の早すぎる死の遠因であったかもしれない。しかし、それが彼を創造的なアーティストに育て、「カインド・オブ・ブルー」や「ビッチェズ・ブリュー」といった名盤が生まれたとも言える。もし「鎌状赤血球貧血症」でなかったら、「マイルス・デイヴィス」は「マイルス・デイヴィス」だっただろうか。 ・・・・・ もし、障がいがある人が、ゲノム編集で原因を取り除けるようになっていたら、そうすべきかどうか。
 
 その答えはまだ出ていない。しかし、我々が答えを出さなくてはならないのだとアイザックソンは言う。

   
 今宵のアルバムは、「マイルス・デイヴィス/Miles Davis」の「ビッチェズ・ブリュー/Bitches Brew」(1970)。フル・アルバムがアップされています。


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 BITCHES BREW
 マイルス・デイビス
 COLUM







「Miles Davis - Bitches Brew 1970 Full Album」

     


00:00 - Pharaoh’s Dance
20:04 - Bitches Brew
47:04 - Spanish Key
1:04:38 - John McLaughlin
1:09:05 - Miles Runs The Voodoo Down
1:23:09 - Sanctuary
1:34:08 - Feio
by knakano0311 | 2023-01-13 00:00 | 読むJAZZ | Comments(0)
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