「バート・バカラック」は1928年、米ミズーリ州カンザスシティ生まれ。2012年9月に亡くなった作詞家「ハル・デヴィッド/Hal David」とのコンビで知られ、60年代前半から80年代にわたり、「ジーン・ピットニー/Gene Pitney」、「ディオンヌ・ワーウィック/Dionne Warwick」、「カーペンターズ/Carpenters」などに多数にヒット曲を提供した。「小さな願い/I Say A Little Prayer」、「雨にぬれても/Raindrops Keep Fallin' on My Head」、「ウォーク・オン・バイ/Walk On By」、「サン・ホセへの道/Do You Know the Way to San Jose」、「アルフィ/Alfie」、「遥かなる影/Close To You」、「恋の面影/The Look of Love」など、数々の代表曲で知られ、「バカラック・サウンド」と呼ばれる独特のスタイルで、ポピュラー音楽界の頂点に立った。
また、60年代からは映画音楽の世界でも活躍し、「明日に向かって撃て!/原題:Butch Cassidy and the Sundance Kid 」(1969年)で、アカデミー作曲賞と歌曲賞を受賞。テーマ曲、「雨にぬれても(歌:B.J.トーマス/B. J. Thomas)」は、世界的ヒットを記録した。その後、1981年にも「ミスター・アーサー/原題:Arthur 」で再びアカデミー歌曲賞を受賞している。
1998年には、「ダイアナ・クラール/Diana Krall」の夫、「エルヴィス・コステロ/Elvis Costello」との共作アルバム、「Painted from Memory」でグラミー賞を獲得した。
「私はアップテンポの曲を書いたことがない。私はバラードやメロディーが好きなんです。それと私はポジティブになることはほとんどありません。たぶんそれは、“She loves you”とか“I’m so happy”という言葉は、そんなに良い歌にならないからですね」(参照 Wikipedia )
またひとり、稀代のメロディー・メーカーを失ってしまった ・・・。
合掌 ・・・ 。
「バート・バカラック」の曲で、一番好きな曲をあげろと言えば、アカデミー賞を受賞した、1981年の映画「ミスター・アーサー」の主題歌「ニューヨーク・シティ・セレナーデ/Arthur's Theme (Best That You Can Do)」でしょうか。80年代のNYの気分がよく出ている歌の雰囲気にこれほどピッタリとはまる邦題も珍しい。「・・・ When you get caught Between the moon and New York City I know it's crazy but it's true ・・・」という、美しいしゃれたフレーズが、しばらくは耳について離れなかったくらい、よく聴いた歌である。そしてNYのあの美しい夜景を思い出す歌。
【 ARTHUR'S THEME (BEST THAT YOU CAN DO) 】 by Burt Bachrach,Carole Bayer Sager,Christopher Cross,Peter Allen
「♪ Once in your life you will find her 彼女に会えるのは君の人生で一度だけ Someone that turns your heart around 君の心を変えるような誰かに会えるのは And next thing you know そして気がつけば You're closing down the town 君は彼女の事で頭がいっぱい Wake up and it's still with you 目が覚めても彼女のことが頭から離れない Even though you left her way cross town たとえ彼女から街に置いて離れても Wonderin' to yourself 自分自身に問いかけてみる Hey what have I found 「一体何を見つけてしまったんだ」と
When you get caught 月とニューヨーク・シティの間に Between the moon and New York City 捕まってしまったら I know it's crazy but it's true そんなことクレイジーだけど、本当なんだ If you get caught もし君が月とニューヨーク・シティの間に Between the moon and New York City 捕まってしまったら The best that you can do 君ができる一番の事は The best that you can do 君ができる一番の事は Is fall in love 恋に落ちることさ
そして彼のピアノが聴ける「エルヴィス・コステロ/Elvis Costello」との共作アルバム、「Painted from Memory」(1998)から、「I Still Have That Other Girl」を。このアルバム、私のお気に入りのアルバムのひとつ。
【 I still have that other girl in my head 】 by Elvis Costello , Burt Bacharach
「♪ I have to say that we should finish it now これで終わりにしよう Before we weaken, 二人ともダメになってしまう前に 'cause we already know this is wrong これが間違いだって知っているから I could give in, sometimes I think that I will 僕は受入れるよ、時々そうするように Despite the temptation, I try to be very strong 誘惑はあるだろうが、僕は強くなる
If my reluctance seems a surprise もし僕の気が進まないことが驚きに思えるなら It's not 'cause I don't want you 君を欲しくないからじゃないんだ But I just know I must hesitate でも僕はなんとなく躊躇している
Because I still have that other girl in my head 頭の中にまだ別の娘がいるから I still have that other girl in my head 別の女の子がね
There may be ugly rumors 僕が嘘をついてきたという that I have been lying 嫌な噂があるが
That is why sometimes I hesitate それが僕が躊躇する理由さ
Because I still have that other girl in my head 頭の中にまだ別の娘がいるから I still have that other girl in my head 別の女の子がね I still have that other girl in my head 頭の中に まだ ・・・ ♪」
さて、同じアルバムからもう一つ。「This House Is Empty Now」。 「村上春樹」は、著書「村上ソングズ」で、彼の厖大なレコード・コレクションから、ジャズ、スタンダード、ロックの多彩なアーティストをピックアップし、訳詞とエッセイで紹介している。この歌「この家は今は空っぽだ/This House Is Empty Now」をこんな風に評し、2番目のヴァースを、こんな風に訳している。
【 This House Is Empty Now 】 by Burt Bacharach , Elvis Costello
「♪ These rooms play tricks upon you この部屋は君に幻を映し出す Remember when they were 覚えてるかい? always filled with laughter? この部屋がいつも笑い声であふれていた頃を But now they're quite deserted でも今は全く見捨てられ They seem to just echo voices 怒りに満ちた声の残響だけが raised in anger 残されているかのよう Maybe you will see my face 君には窓枠に映る reflected there on the pane 僕が見えるかもしれない In the window of our poor forlorn みすぼらしい窓に and broken home 荒れ果てた家
Still this house is empty now この家は空っぽのまま There's nothing I can do 君を引き止めるために to make you want to stay 僕にできることはなにもない So tell me how 教えて欲しい これからどうやって am I supposed to live without you? 生きていけばいいんだ 君なしで