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大屋地爵士のJAZZYな生活

「Long Yellow Road ジャズ伝説・穐吉敏子の94年」を観る

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 去年、アメリカでジャズの殿堂入りを果たした「穐(秋)吉敏子」。94歳にして現役ジャズミュージシャン。「マイルス・デイビス/Miles Davis」らジャズの巨人と並び、アジア人初の栄誉となった。そんな「穐吉敏子」の集大成的な90分の長編ドキュメンタリー「Long Yellow Road ジャズ伝説・穐吉敏子の94年」がNHK BSにて5月11日(土) 深夜0:10から放送された。

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 番組は3部で構成されていて、第1部は、昨年の殿堂入り、授賞式、記念公演の舞台裏や、本人へのインタビューに加え、関係者、ミュージシャンの証言、「ジャズ・アット・リンカーン・センター」での「穐吉敏子ジャズ・オーケストラ」の演奏など、彼女の「今」を紹介。また日本でのJAZZ活動、1956年、26歳で単身渡米して、日本人としては初めて「バークリー音楽院/Berklee College of Music(現バークリー音楽大学)」を卒業し、和洋折衷の究極を示したと言われる代表作「孤軍」を作曲した時のエピソードなどが語られる。この曲は、戦後30年を経てフィリピン・ルバング島で発見された「小野田寛郎少尉」のニュースにインスパイアされたと言う。

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 孤軍
 秋吉敏子
 SMJ






「Kogun(孤軍)/ B面 - 秋吉敏子」




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 第2部では、男社会のジャズ界で女性アーティストとして、アメリカで生きていくアジア人として長く険しい道のりが描かれていく。人種や女性差別を受けながらも、ジャズと和の要素を融合させ、独自のジャズを開拓。ピアニストとしてはもちろん、作・編曲家としての才能を高く評価した、現パートナーのサックス奏者「ルー・タバキン/Lew Tabackin」とビッグバンドを結成し、成功への道を歩んでいく姿を伝える。

 ピアニストとして、日本人として、一人の女性として闘い続けてきた秋吉の人生は、この番組のタイトルともなっている曲、「Long Yellow Road」に凝縮されており、彼女のライブでは必ず冒頭に演奏される。

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 ロング・イエロー・ロード
 秋吉敏子
 BMG JAPAN







「Long Yellow Road - Toshiko Akiyoshi/Lew Tabackin Big Band」

     

   

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 そして、第3部。戦争。彼女が、原爆直後の一枚の写真に写った女性にインスパイヤーされて作曲したのが、JAZZ組曲「ヒロシマ ~そして終焉から」。広島でのコンサートをライブ・レコーディングしたのが、アルバム、「ヒロシマ ~そして終焉から」(2001)。
  
 そして、2001年8月6日に、広島でコンサートを行った直後のNYで、あの「9.11」が起こった。彼女は、それ以後のコンサートから、最後の曲に、この「ヒロシマ ~そして終焉から」の第3楽章「HOPE」を必ず演奏するようになったという。私が、彼女のコンサートを聴いた時も、最後は、この「HOPE 希望」だった。
  
 そんな彼女が93歳で行った広島を含む日本ツアーの様子やアメリカでのコンサート。さらに生まれた満州を訪れる映像も紹介される。JAZZに捧げた一女性の人生。見ごたえのある90分であった。
 
    
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 ヒロシマ そして終焉から
 秋吉敏子
 ビデオアーツ・ミュージック




  


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 この第3楽章「HOPE」に「谷川俊太郎」が詩をつけ、彼女の前夫、「チャーリー・マリアーノ/Charlie Mariano」との愛娘「マンデイ・満ちる」が歌う「HOPE 希望」を2006年にリリースされた。日本語バージョンと「マンデイ・満ちる」自身が英訳した英語バージョン、さらに秋吉のピアノソロが収録されている。
  
    
【 希望 】 作詞;谷川俊太郎  作曲;秋吉敏子  
    
「♪ 希望 それは こころ  あふれやまぬ ひとのいのち
   よみがえる草木 朝日とともに 明日へと こころは かがやいて
   
   忘れられぬ 日々も 子どもたちの 未来のため
   こころよ飛べ 夢見る世界へ 希望  あふれて  ♪」


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 HOPE「希望」 シングル, マキシ
 Toshiko Akiyoshi 秋吉敏子、Monday 満ちる
 日本クラウン






     
「Hope - TOSHIKO AKIYOSHI(piano version)」

   
「HOPE/希望 - 秋吉敏子&マンディ満ちる(日本語ver.)」


「秋吉敏子&マンディ満ちる - HOPE/希望(English ver.)」(英語詩付き)


 「東洋人にクラシック音楽など分かるか」という偏見の壁を乗り越えてマエストロと称賛された「小澤征爾」。「アジア人、日本人にJAZZなど分かるのか」という偏見と闘って殿堂入りした「穐吉敏子」。かくも偉大なパイオニアたち ・・・。








by knakano0311 | 2024-05-14 00:00 | 観るJAZZ | Comments(0)
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