私が彼のアルバムに接したのは、「ボディー・ヒート/Body Heat)」(1974)であった。そこに「Everything must change」が収録されていた。この曲は、作曲家としても知られている、米国ヒューストン出身のソウル・シンガー、「ベナード・アイナー/Benarad Ighner」が1974年に作詞作曲した曲で、「Body Heat」には、「ベナード・アイナー」自身による歌唱が収録されている。
【 Everything must change 】 作詞・作曲 Benarad Ighner
「♪ Everything must change 全ては移ろいゆく Nothing stays the same 一つところに留まるものは何一つとしてない Everyone must change 全ての人も変わりゆく No one stays the same 変わらない人など誰一人いない
The young become the old 若き人もやがては老い And mysteries do unfold 不思議はやがて不思議ではなくなる Cause that's the way of time 時というものはそういうもの Nothing and no one goes unchanged 移ろわないものなど何一つないのだ
また、あの「Fly Me To The Moon」をスウィングに編曲して大ヒットさせたのもした「クインシー・ジョーンズ」だと知った。この曲、ご存じ「フランク・シナトラ/Frank Sinatra」のキャリア後期の大ヒット曲であり、多くの歌手に歌われているスタンダードであるが、元々は、ゆったりとスローな3/4拍子のワルツだった。これがテンポアップして4/4の、4ビートのスウィング・ナンバーになったのは「クインシー・ジョーンズ」のアレンジによるもの。「カウント・ベイシー」とアルバムを制作していた「クインシー・ジョーンズ」が、この4ビート・ヴァージョンに編曲したところ、「シナトラ」が気に入って、そしてベイシーと組んだ彼のアルバム「イット・マイト・アズ・ウェル・ビー・スウィング」(1964)に収録されることになったという。今ではほとんどの歌唱が、この4ビート・ヴァージョンであろう。「シナトラ、ザ・ベスト!」(2008)から。
彼の指揮者&バンドマスターとしての真価が発揮されたのが、「マイルス・デイヴィス/Miles Davis」の遺作となったライヴ・アルバム「Miles & Quincy Live At Montreux」(1993)だった。マイルスは、とにかく「旧作は振り返らない」「自分の古い音楽を演奏しない」人だった。そんな彼に、50年代の彼のナンバーを再演させたのが、「クインシー・ジョーンズ」。多くのジャズ・ファンを驚かせた。クインシーの指揮によるオーケストラにバックアップされたマイルスは、1991年7月8日の「モントルー・ジャズ・フェスティヴァル」に登場。数年前に他界した「ビル・エヴァンス/Bill Evans」へのトリビュートという意味も込めて、病を押して「古い音楽」を見事にプレイした。そしてこれが、3ヶ月後に他界するデイヴィスにとって、最後の録音となった。アルバムは1993年に発売され、ビルボード・ジャズ・アルバム・チャートのトップに立った。(参照;追悼クインシー・ジョーンズ、米音楽界の最大巨星にして、日本のお茶の間も席巻した「すごさ」6つ;川崎大助)