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大屋地爵士のJAZZYな生活

アブナイじじいと思われそうで ・・・

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 最近はまっている配信のTV番組がある。NHKのEテレで放映され、 2013年からイギリスBBCで放映されていた「ソーイング・ビー/原題;The Great British Sewing Bee」。かっての大人気番組「料理の鉄人」の裁縫版といったらわかってもらえるだろうか。事前オーディションで選考された腕自慢のアマチュア裁縫家たちが、毎週与えられるテーマに沿った縫製技術や出来栄えを競い合い勝ち抜いていく「裁縫バトル」番組である。毎週脱落する人数が決められており、各週の脱落者は1名から2名。審査員による順位づけで評価が行われ、3競技終了後の審査で、その週の全作品から1つの優秀作品が選ばれ、同時に総合評価で最下位となった者が脱落していく。決勝は3名で行われ、総合評価で最も高い評価を得られた1名が優勝者となる。

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 「bee」は直訳すると「蜂」だが、「皆でわいわいと何かを行う集まり」を指し、家庭洋裁の黄金期であった1950年代のイギリスでは各地で盛んに「sewing bee(縫いもの会、裁縫の集い)」が行われていたことにちなんでつけられた番組名で、元は、およそ80年前の第2次世界大戦の戦時下で、故エリザベス女王の母君、皇太后陛下が洋裁のできる家庭の主婦を宮殿に集めて、兵士のために手製の衣類を縫い、戦地に送るというイベントを行ったことから発しているという。

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 会場となるソーイング・ルームには、各種の布やリボン、ファスナーなどがストックされ、参加者には一人一台ずつの裁縫台とマネキン、ミシン、アイロンなどが割り当てられる。参加者は、使用資材の選択に始まり、型紙の準備、裁断、縫製、アイロンかけ、飾り付けなどの作業をすべて制限時間内に終わらせて課題作品を完成させる。課題もジャケット、ドレスだけでなく、スポーツウエア、子供服、なんと犬のウエア、水着まであった。

 挑戦者は10代から80代までの男性、女性だが、やはり女性のほうが多く、ほとんどが主婦、男性は洋裁には関係のない仕事をしていて、大型トラックの整備士、軍人、警察官、ITエンジニアなど多種多様。驚くことに、補聴器を使う難聴者や、下肢障害者なども参加している。

 昭和の男です。私は、小学生の時、運針用布、それと確か運動会で使うパンツ、オットセイの縫いぐるみを作り、独身時代には繕いものをした以外は、裁縫の経験もないし、もちろん趣味もない。それにもかかわらず、はまった理由は、仕様(課題)にマッチする設計(デザイン)を考え、図面(型紙)化し、その図面(型紙)通り加工し、組み立て(縫製)し、出来栄え、品質、技術が要求されるというところが、商品開発やものづくりと共通し、開発エンジニアだった私の心を強く刺激すると感じたからである。既存のものや市販のものを改造して、まったく別なものに作りなおすという課題などは、NHKの「魔改造の夜」に通ずる面白さもある。シーズン10までうち、ほぼ半分くらい見終わったが、まだまだ続く。

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 見ているうちに、「コバステッチ」、「身ごろ」、「袋縫い」だの、「コンシール・フアスナー」だの、「ドレープ」だの、裁縫用語、ファッション用語もずいぶんと覚えたし、縫製技術の勘どころや難しさなども分かるようになった。そして何よりも、ショッピング・モールなどに出かけた時、服飾売り場だけではなく、ご婦人方の着ている服の柄合わせなど出来ばえやデザインに目が行くようになってしまった。残念ながらドレスやスカートは少なくなってしまったが・・・。もちろん妻からは、近づいてジロジロみたりするのは、「アブナイじじいと思われそうだからヤメテ!」と釘を刺さされているが ・・・。


 今宵の曲、「Sewing Bee」ならぬ「A Sleeping Bee(A Sleepin' Bee)/眠る蜂」。「ティファニーで朝食を/Breakfast at Tiffany’s」や「冷血/In Cold Blood」の作者として有名な「トルーマン・カポーティ/Truman Capote」の短編、「A House of Flowers(花咲く館)」を基にし、彼と「ハロルド・アーレン/Harold Arlen」が組んだ、同名の1954年のブロードウェイ・ミュージカルの劇中歌だそうだ。「A House of Flowers」は、カリブ海の島、ハイチの首都ポルトー・プランスの娼館を舞台にした恋物語という。

 「村上春樹」は、ジャズ、スタンダード、ロックの名曲を、訳詞とエッセイとで紹介する著書、「村上ソングズ」で、こんな風に評している。

 『「眠る蜂」はこれまで、たくさんの優れたジャズ・シンガーによって取り上げられているが、最初のヴァースを含めて、フル・ヴァージョンで歌う人はほとんど見あたらない。 ・・・・ 僕が知る限りでは、ヴァースからちゃんと歌っているのは、トニー・ベネットくらいだ。 ・・・・ 「眠る蜂」という歌は、ヴァースの前口上からきちんと聴いていかないと、歌詞の内容が十全に理解できないところがある。」


   
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 村上ソングズ (村上春樹翻訳ライブラリー)
 村上春樹
 中央公論新社











 「A Sleepin’ Bee」の英語歌詞はこちら。

  こんな意味でしょうか。「村上ソングズ」に掲載されている「村上春樹」氏の訳のさわりをあげておきます。
    

「♪ 恋をしているあなた。
   それがかけがえのない恋なのかどうか。
   心がふと揺れたとき、
   こたえを教えてくれる、
   ぴったりのおまじない。
  
   蜂を一匹つかまえなさい。
   もしもその蜂が刺さなければ、
   あなたは魔法に護られています。
   案じることはありません。
   あなたはもう、とっておきの恋を 
   見つけたのですから。

   手のひらで蜂が
   眠りつづけたなら、
   あなたは恋の
   魔術にくるまれている。
 
   ・・・・・・・・・・・ ♪」 訳詞;村上春樹(村上ソングズより)

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 「村上春樹」曰く、「ラルフ・シャロンのピアノだけをバックに、頭からしっぽの先まで、律儀なまでに老々と歌い上げる」「トニー・ベネット/Tony Bennett」の歌唱を聴いてみましょうか。アルバムは、「Tony Sings for Two」(LP1960)から。「All The Time Greatest Hits (日本盤のみのボーナストラック)」(2011)などにも収録されています。

  
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 Sings for Two
 トニー・ベネット/Tony Bennett
 Hallmark




  
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 トニー・ベネットのすべて/All Time Greatest Hits
 トニー・ベネット/Tony Bennett
 SMJ






「Tony Bennett - A sleepin' bee」
  
     


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 「ピアノは?」と言われれば、「ビル・エヴァンス/Bill Evans」でしょうか。「Autumn Leaves」(1969)をはじめ多くのアルバムに収録されています。今宵は、「The Montreux Jazz Festival, 1968」でのライブを。パーソネルは、「ビル・エヴァンス(p)」、「エディ・ゴメス/(b)」、「ジャック・ディジョネット/(ds)」。


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 モントルー・ジャズ・フェスティヴァル
 ビル・エヴァンス
 Universal Music







「A Sleeping Bee (Live At The Montreux Jazz Festival, 1968) - Bill Evans」





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 そのエヴァンスをトリビュートしているのが、ブラジル出身のジャズ・ピアニスト、ボーカリスト、「イリアーヌ・イリアス/Eliane Elias」。アルバムは、「ビル・エヴァンス」へのリスペクトが全編に漂う、「Something for You: Eliane Elias Sings & Plays Bill Evans」(2007)から。パーソネルは、「Eliane Elias, piano and vocals」、エヴァンスのメンバーだったこともある彼女のパートナー、「マーク・ジョンソン/Marc Johnson, bass」、「ジョーイ・バロン/Joey Baron, drums」。
  
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 Something for You
 イリアーヌ
 Blue Note Records






   
「ELIANE ELIAS - A Sleepin' Bee」
  


   

by knakano0311 | 2025-07-13 00:00 | JAZZ的トリビア | Comments(0)
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