前章「CFに魅せられて」で「ケイコ・リー」について、「なんとなくとらえどころのない印象」という評価をしていたが、本日発売されたアルバムを聴いて、正直驚いた。今までとは別人のような印象である。アルバムは「Keiko Lee Live at "BASIE" with Hank Jones」。そう、あの岩手県一関市にある有名なJAZZ喫茶「BASIE」で、ベースに坂井紅介を交えてのドラムレス・ライブである。いままでのケイコ・リーのイメージは、弾き語り、太くて低い声、豊かな声量・・・かな。しかし、違和感をずっと感じていた。本アルバムでは、一変、KEYも高く、ナチュラルな声質になっているように思える。自由にリラックスして、自在にスイングする彼女のスタンダードにすっかり魅せられてしまった。また生ける屍、失礼!歩くジャズの歴史みたいな御年八十八歳(ひえ~~~~っ)のハンク・ジョーンズとのからみもまさにJAZZの空間と時間を観客と一体になって紡ぎだしている様に思える。過去の彼女のアルバムと聞き比べると、私が過去に感じていた違和感はいっそうはっきりした。弾き語りのアルバム、「ローマからの手紙」。スタンダードをナチュラルに歌う、彼女の太くて低い声と曲調とはまったくマッチしていない。ピアノはさらに違和感がある。なぜタイトルが「ローマからの手紙」なのか?さっぱり分からない。むしろ、シンガーに徹した「If It’s Love」のような、ソウル、ブルースっぽい曲のほうがまだ、マッチする。邪推かもしれないが、日本版ダイアナ・クラール狙いのレコード会社のマーケティングに乗せられていただけのような気がする。はっきり言えば彼女の魅力を引き出せなかった「プロデューサーが才能がない」の一言に尽きる。弾き語りなどせずに、自由な唄歌いに徹したほうがはるかにいい。