小学校の音楽の授業で習った笛、ハーモニカを除くと、私が始めて手にした楽器は、ギターであった。いまでこそ情操教育とやらで、子供たちがピアノなど数多い楽器に触れる機会が多いが、私の子供時代はオルガンが定番、小学校のピアノを買う足しにするため、全校生徒が総出でイナゴ取りをしたこともあった。イナゴをどうするかって?信州の名産イナゴの佃煮の業者に売るんですよ。故郷「松本」は鈴木鎮一という方が、「才能教育研究会」という幼児音楽教育を提唱した地でもあって、当時(昭和30年代)でも、結構子供にピアノやらバイオリンを習わせる親は多かったように思う。そんな子供たちを多少うらやましくも、横目で睨んでいたが、とにかく、高校時代にギターを買ってもらった時は本当にうれしかったなあ。
そんなんで、ギターには、やや思い入れが強いわけであるが、そもそもギターはなぜあれほど世界中の若者に普及したのであろうか?元来ギターはクラシックは言うまでもなく、ピアノと並んであらゆるジャンルの音楽で主要な楽器であったが、ロックンロールを皮切りにフォーク、ロックと若者の間に広がっていった。(リズム楽器からソロ楽器へ変わっていくあたりは映画「Back To The Future」に、ロックギターの系譜は「School Of Rock」によく描かれている。) その理由はいくつかあるだろうが、私は「ギターはファッション性モバイル楽器」であることが最大の理由だと思う。それは、携帯電話、ウォークマン、i-POD、モバイル-PCなどに共通するコンセプトであったとおもう。
私の好みのオススメのアルバム。最初は、「JAZZギタリスト/アル・ディ・メオラ」、「フージョンギタリスト/ジョン・マクラフリン」、「フラメンコギタリスト/パコ・デ・ルシア」という名人3人が、1980年12月5日、サンフランシスコで繰り広げた伝説的ライブ。ギター好きなら「総毛立つ」、「鳥肌がたつ」、こんな表現がぴったりのすさまじいギターバトル。1曲目、メオラ作品の「地中海の舞踏」、切れ目無しに続く、パコの作品「広い河」。なんという迫力、なんというエモーショナルなプレイ。「凄い、聴いてくれ」としか表現のしようがない。
フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ~スーパー・ギター・トリオ・ライヴ!
ジョン・マクラフリン,パコ・デ・ルシア アル・ディ・メオラ / ソニーミュージックエンタテインメント
ISBN : B00005HUYC
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オランダが生んだジプシー・ジャズ・ギターの実力者、「ローゼンバーグ・トリオ」。今、ヨーロッパで凄い人気らしく、ジャンゴ・ラインハルト直系のギター・トリオといわれている。何しろギター・テクが抜群に凄く、テンポの早いジャズ・ナンバーも鮮やかに、軽々と弾きこなす。
最初のアルバムは、あの「アン・バートン」との共演で知られる、オランダを代表するJazzピアニスト、ルイス・ヴァン・ダイクとの異色共演盤の「ライブ」。私のオススメは、なんといっても、あの「SANTANA」の「Moonflower」。この「Moonflower」は、寺嶋靖国氏監修の「Jazz Bar 2005」でも収録されている名曲。
また、4曲目のメドレー「ブルース・イン・G~いつか王子様が~ブルーゼット」。ギターとピアノの異色共演であるが、まったく違和感は感じさせず、あのリリカル、端正なピアノのヴァン・ダイクがノリノリの演奏である。まさしくヨーロッパでなくては生まれ得なかったアルバムである。
ライヴ
ルイス・ヴァン・ダイク・アンド・ザ・ローゼンベルグ・トリオ / ガッツプロダクション
ISBN : B000A0C7KQ
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トリオのリーダー、「ストーシェロ(ストーケロ)・ローゼンバーグ」のソロアルバムであるが、「ローゼンバーグ・トリオ」と同様、サイド・ギターとベースのトリオによる演奏。やっぱり抜群の速弾きは驚異的。ラインハルトに対する思いを込めての「ジャンゴロジー」、私の好きな「I Will Wait For You/シェルブールの雨傘」がパッショネートにロマンチックに演奏される。
Ready'n Able
Stochelo Rosenberg / Iris Music
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「ラージュ・ルンド」。2005年のセロニアス・モンク・コンペティションで優勝した新人ギタリストの、ラテン・カバーによるデビュー盤。アルバム・タイトルがいい。「Romantic Latino
For Ladies」。北欧ノルウェイの出身、28歳。やはり北欧系のミュージシャンだけあって、ギターもリリカル。MJQジョン・ルイス作でジプシー・ジャズ・ギタリスト「ジャンゴ・ライハルト」にささげた名曲「ジャンゴ」も取り上げられている。「おいしい水」などボサノバ3曲も取り上げられているが、いずれも瑞々しいロマンティシズムにあふれた演奏で、「For Ladies」という副題にもふさわしい。今後期待される若手のギタリスト。
ロマンティック・ラティーノ
ラージュ・ルンド・クァルテット / ポニーキャニオン
ISBN : B000FTW9KU
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最後は「ジム・ホール」。いわずと知れた、かっての「デイブ・ブルーベック・カルテット」のギタリストにして、いまや大御所、ジャズ・ギタリスト中のギタリスト。パットメセニー、ジョン・スコフィールドらもジムへの敬愛、彼からこうむった深い影響を口にするという。その人柄は風貌、作品にもよく表れている。本当に好きなギタリストの一人。
1975年にリリースされた「アランフェス協奏曲」はCTIレーベルの全作品中、最大の売り上げを記録したという。多分ジャンルを超えたジャズ以外のファンに支持されたのであろう。
アランフェス協奏曲
ジム・ホール ローランド・ハナ ロン・カーター スティーブ・ガッド チェット・ベイカー ポール・デスモンド / キングレコード
ISBN : B00005F7CP
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スペイン、ラテンに対する彼の想いは、もう1枚のアルバムにも色濃く反映されている。
哀愁のマタドール
ジム・ホール アート・ファーマー トミー・フラナガン ロン・カーター アラン・ガンリー ドーン・トンプソン ジョアン・ラ・バーバラ エロール・ベネット ジェーン・ホール / ユニバーサルクラシック
ISBN : B00024Z9AK
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今回の選定の基準は、JAZZを前面に押し出さず、フラメンコ調、ジプシー調、ラテン調・・・・で選んでみました。ギター好きは必聴ですよ。
これで終わらそうと思ったが、やっぱりJAZZ、JAZZのギタリストもいれておかないと!とお思い直し、特別付録は、「Mark Whitfield And The Groove Masters」の同名のライブ・アルバム。
ギターとハモンド・オルガンとドラムの一風変わった編成のトリオ。切れ目なくフレーズを繰り出すマークのギターも、めちゃ凄いが、ロニー・スミスのハモンドもそれにまして凄い。クレジットをみるまで、トリオだとはまったく気がつかなかったくらい乗せられていた。またドラム、「ウィナード・ハーパー」が凄い。骨太で、ぶれずに、極めて安定している。その上、スピード感抜群。繰り出すアドリブ・ソロのすごいこと。当代随一といわれるスティーヴ・ガットにも比肩するだろう。ブルース「The Whip」、スタンダード「Bye Bye Blackbird」、かのウェス・モンゴメリーへのトリビュート、「Road Song」など3人の完璧といえるアンサンブルが聴く人をあきさせない。必聴!!最高!!ですよ、 グルーヴィ・ファン、JAZZギター・ファン。
日本国内先行発売、来日記念盤とやらのせいか、マイナーなレーベルのせいか、残念なことにAmazonにデーターがありません。ちなみに、タワーレコードで入手しました。
発売元;ヴェガ・レコード 品番;ART1030
マーク・ホイットフィールド・アンド・ザ・グルーヴ・マスターズ
マーク・ホイットフィールド / インディーズ・メーカー
(追記)
戦後日本のジャズ・ギタリストの第一人者として知られた沢田駿吾(さわだ・しゅんご)さんが28日、肝細胞がんのため死去した。76歳だった。(毎日新聞) 合掌・・・