このところ、「海外のシニア覚え書」みたいなシリーズのなかで、じじばば映画の紹介を続けてきましたが、いっそ、じじばば映画の傑作をまとめて紹介してしまおうかと思います。
ごめんなさい!。今回は、「シネマな生活」にタイトルを変えたほうがいいかもしれませんね。
まず、ドラマ編。最初は「八月の鯨」。かなり昔にTVで放映され、その後探してみましたが、DVD化はまだされてないみたいで、ビデオ、それも吹き替え版のみが出ている。わたしはTVから録画したものしかありませんが。DVD化が望まれます。(追記;どうやらDVD化されたようです)
リビーとセーラの老姉妹は毎年夏になると、メイン州の岬のこじんまりとした別荘で夏を過ごす。二人が少女のころには、鯨がやってくるのが、岬からよく見えた。姉のリビーは、目が不自由になってからというもの、気むずかしく、わがままな性格になってしまった。しかし、妹のセーラは姉をいたわりながら、かいがいしく身の回りの世話をしている…生きていくことの意味を問いかけながら、ハリウッド黄金時代の二大女優、「ベディ・ディヴィス」、 「リリアン・ギッシュ」の迫真の演技が、静かな感動を呼ぶ、「リンゼイ・アンダーソン」監督の名編。
八月の鯨(吹替版)
/ ビクターエンタテインメント
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八月の鯨 [DVD]
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
「A.i.」の名子役「ハーレイ・ジョエル・オスメント」と、「マイケル・ケイン」、「ロバート・デュバル」という老名優が共演したハートウォーミングなドラマ「ウォルター少年と、夏の休日」。父のいない14歳のウォルター少年が、ひと夏の間、母の親類である老兄弟の家に預けられる。デュバル演ずる兄、ケイン演ずる弟によって、閉ざされていた少年の心が、次第に開いていく。そして別れのときがくるが・・・・。老俳優ふたりが、「こんな風に年をとりたい」と思わせる、いぶし銀の名演技を見せる。
ウォルター少年と、夏の休日 コレクターズ・エディション [DVD]
ポニーキャニオン
やっとDVD化がかなった、アカデミー賞作品賞ほか4部門を受賞したあまり知られていない、地味な名作。これが遺作となった、「ジェシカ・タンディ」扮する白人の老女と初老のベテラン黒人運転手との25年の心の交流を描くヒューマンドラマ。彼女はこの作品でアカデミー賞を受賞しました。大事故を起こしかけた、母・デイジーの身を案じた息子のブーリーは、運転をやめさせ、母親づきの運転手を雇うことにするが…。運転手には、アカデミー賞俳優「モーガン・フリーマン」 。
「老いる」ということの哀しさと「老いる」がゆえに得られる心の豊かさとはどのようなものなのかをしみじみと考えさせてくれる作品です。
ドライビングMissデイジー デラックス版
ジェシカ・タンディ / / ジェネオン エンタテインメント
ISBN : B000J4P070
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70歳になった老人は、子に背負われて楢山に捨てられなければならない。いわゆる「姥捨て山伝説」。山奥の村の掟に従い、喜んでお迎えをまとうとする信心深い母と、哀しみとともに母を山へ連れていく息子。2人の姿を通し、自然への畏怖や、掟を受け入れざるを得ない人間の業や宿命といったものを、深沢七郎の原作をもとに描いた、今村昌平監督の名作。ラテン歌手から女優に転じた坂本スミ子の名演技が圧倒。
感動の名作には違いないが、先の米国映画3作に比べいかにも暗い。老いに対する日本人の価値観の違いか。
楢山節考
緒形拳 / / 東映
ISBN : B000066AEQ
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次は、アクション編。
天藤真のベストセラーを映画化した、岡本喜八監督1991年作品。晩年の喜八作品の中では傑作との評価が高い。
刑務所を出所した正義と平太、健次の三人組は紀州一の山林王・柳川とし子刀自を誘拐し、身代金5000万円を家族に請求しようとする。ところが刀自は身代金を100億円にすべく主張。かくして世界が注目する身代金の受け渡しだが、そこには刀自の賢い、したたかな計算が隠されていた。老婆誘拐事件がコメディ・タッチで描かれた作品だが、「北林谷栄」扮する、誘拐される刀自の巧みな演技が最高で、この映画の誘拐という深刻な側面を、コメディタッチな作風に感じさせてしまう最重要なキャラを見事に演じている。「こんなおばあちゃん最高!」と皆さん思いますよ。
大誘拐 RAINBOW KIDS
北林谷栄 / / 東宝
ISBN : B000CFWN6M
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「太田蘭三」原作の同名ミステリーを「犬童一心監督」が映画化。高級老人ホームで悠々自適な日々を過ごしていた老人たちは、死んだ仲間が記していた「死に花」なるノートを発見。そこには、穴を掘って、銀行から17億円を強奪する計画が記されていた。その銀行が、かつて仲間のひとりを理不尽にリストラした銀行であったことも手伝い、老人たちはこの計画を実行しようと決意するが…。ボケる寸前の頭脳を駆使して、計画を作り、ガタガタの身体を駆使して、銀行までのトンネルを掘っていくじいさん達に共感。バイアグラ使ってまでナンパしたり、介護のお姉さんにセクハラしたり、おおボケの爺さんなど個性豊かな爺キャラがほんとに笑える。
これを演ずる俳優陣が凄い。山崎努、故・青島幸男、谷 啓、長門勇、故・藤岡琢也、宇津井健・・・・・。もう故人になってしまった人もいるが、公開当時平均年齢73歳のダテに年はとっていないベテランの役者たちが、完全犯罪を目指す金庫破りに命を燃やす男たちに扮する。これだけでもぞくぞくしてしまうが、金だけが目的の犯罪ではないが、ラストは、「老い」からはどうしても逃れられないことをやっぱり認識してしまう「落ち」になってます。
死に花
山崎努 / / アミューズソフトエンタテインメント
ISBN : B0002UOR6G
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次はアメリカ版「死に花」といえる「スペース カウボーイ 」。咲かせるターゲットは、宇宙。その昔、「猿」に宇宙飛行の栄誉を奪われた元・宇宙飛行士たちのチームが、地球に危機をもたらす衛星システムの修理に挑むため、チームが再結成される。監督兼主演の「クリント・イーストウッド」のほか、「トミー・リー・ジョーンズ」、「ドナルド・サザーランド」、「ジェームズ・ガーナー」 などこちらもベテラン老優が大活躍。ラストシーンの挿入歌は「Fly Me To The Moon」と「落ち」にぴったりの歌で粋。
スペース カウボーイ 特別版
クリント・イーストウッド / / ワーナー・ホーム・ビデオ
ISBN : B000HCPVGY
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最後に、私の大好きな「じじばば」映画を!
「ヘンリー・フォンダ」、「キャサリン・ヘップバーン」の晩年の代表作であり、ふたりに、アカデミー主演賞をもたらした「マーク・ライデル監督」の名作「黄昏」。「ヘンリー・フォンダ」にとっては、これが遺作となった。ストーリーは、毎年、老夫婦が夏を過ごすニューイングランドの別荘に、彼らの娘一家が訪ねて来る。疎遠だった娘とは心が通じ合わない父だが、孫の存在によって親としての愛情を甦らせる。娘を演じるのは、ヘンリーの実の娘「ジェーン・フォンダ」。私生活でも、実父、「ヘンリー・フォンダ」と、ぎくしゃくしていたという。もうあまり時間の残されていない実父ヘンリーのために本作を企画、和解のきっかけとしたという。そのエピソードが本作をいっそう奥深い作品にしている。
黄昏
ヘンリー・フォンダ / / ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
ISBN : B000HT2MQY
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このように、年輪を経てきた「じじばば」を題材にしてこそ、アクションであれ、サスペンスであれ、コメディであれ、ドラマであれ、深い感動や示唆に富む映画もできるというもの・・・。
ざっと思いつくままあげてみたが、まだこの「じじばば映画」の分野は、テーマやストーリー、マーケティングに開拓の余地が多分に残されていると思うし、これからも続々この年代にターゲットをあてた映画が出てきますよ。楽しみがまた増えますな!
朝日新聞の選んだ年間ベストテンを再上映する「2007朝日ベストテン映画祭」。連日、シニアのお客さんで一杯でした。