人気ブログランキング |

大屋地爵士のJAZZYな生活

バラ色の人生とは?  ~映画「エディット・ピアフ」によせて~

b0102572_23434073.jpg

評判の高い映画、オリヴィエ・ダアン監督「エディット・ピアフ  愛の讃歌」を見ました。シャンソンといえばこの人を置いて他にないトップ中のトップ、歌姫エディット・ピアフ。歌と愛に生きた伝説の歌姫ピアフのまさに壮絶な生涯を描いた作品。

第1次世界大戦の真っ只中、1915年、パリの下町で大道芸人の父と場末の歌手である母との間に生まれたエディット。祖母が経営する娼館に預けられ幼少期を過ごすが、この間に光を失ってしまう。娼館の女たちはエディットに精一杯の愛を注ぎ、やがて「聖テレーズ」に祈りを捧げ、奇跡的に光を取り戻す。やがてストリート・シンガーとして日銭を稼いでいた彼女は、有名クラブのオーナー、ルイ・ルプレにその歌の才能を見出され人気シンガーとなっていく。このとき、つけられた芸名が「ラ・モーム・ピアフ(小さな雀)」である。その後、恩人ルプレの死で絶望のふちに立っていた彼女を著名な作詞・作曲家レイモン・アッソが本格的なシャンソン歌手「エディット・ピアフ」として厳しく育てデビューさせる。その後はあっという間にスターダムを駆け上がっていく。そして生涯最大の愛、マルセル・セルダンとの出会いと悲劇的な別れ。あの「愛の讃歌」は、セルダンとの愛に捧げられた歌。絶望、自動車事故、酒、麻薬、再びの愛と別れ・・・・・・。歌うことへの恐ろしいまでの執念、体を蝕む麻薬、オランピア劇場での再起のステージ。そして47歳での早すぎる死。まさに歌に生き、愛に生きた、「バラ色」に凝縮された壮絶な47年の人生であった。

b0102572_17412168.jpg

この映画、音楽的にも素晴らしい演出がなされている。まず、有名になってからの歌声と歌唱シーン。この場面に、ピアフ自身の声以外にだれの声を持ってこれようか。見事に主演の「マリオン・コティヤール」の歌唱シーンの演技とピアフの声は違和感どころか素晴らしくマッチングしている。勿論、ピアフの歌声は映画の随所にちりばめられているが、監督はそれを決して多用しない。クラブ歌手に見出してくれた恩人の死によって絶望していたピアフが、本格的シャンソン歌手としてコンサートホールでのデビューシーン。歌声は流れず、ストリングスによる緩やかなテーマ曲。カメラは極度の緊張と不安が溶けて、歌うことによって自信と生きがいを次第に取り戻していく彼女の表情、彼女の歌に感動し、スタンディング・オーベイションをおくる観客の歓喜の表情を映し続ける。

40代前半なのに、老婆ともいえる彼女の晩年の壮絶な姿を演ずる女優「マリオン・コティヤール」の演技も素晴らしいが、抑制の効いた映像によって、壮絶さをいっそう際立たせている撮影監督は日本人の永田鉄男氏。

また、物語が終わって、クレジット・ロールが流れてもしばらくは無音、静寂、感動の余韻。やがてストリングスによるテーマ曲が静かに流れエンディングへ。いつもはクレジットが流れ出した時点で、多くの観客が席を立つのだが、この映画は誰一人クレジットが終わるまで、席を立つものはいなかった。  

「愛の讃歌」、「バラ色の人生」、「ミロール」、「パダン・パダン」・・・。ピアフの歌は映画の中で、いくつも聴けるのだが、私は晩年の代表作、ミシェル・ヴォルケール作詞、シャルル・デュモン作曲の「水に流して」に一番心を打たれた。「私は後悔していない・・・」と自身の人生を振り返り、重ねたその歌。晩年、オランピア劇場での公演を半ばあきらめていた彼女はこの歌に出会った瞬間、公演を強く決心し、執念のリサイタルの幕があく。

4度目の、そして最後のオランピア劇場への公演にかけるその執念に、私は、晩年の武道館リサイタルで「川の流れのように」を唄う「美空ひばり」を一瞬重ねて観ていた。
とてもピアフのような人生とは縁がない私たちだが、「バラ色」とはいかないまでも、少なくとも「私は後悔していない・・・」といえる晩年を送りたいものだ。

その最後のオランピア劇場コンサート(1961)のシーン。「水に流して (私は後悔しない)  NON,JE NE REGRETTE RIEN 」。演ずるは、「マリオン・コティヤール」、歌うは「エディット・ピアフ」。

          

「エディット・ピアフ  愛の讃歌」。私が今年見た映画の中で多分最高傑作であろう。
原題は「La Vie En Rose/バラ色の人生」。凝縮して描かれた彼女のその人生を考えると、邦題「愛の讃歌」より、原題「バラ色の人生」のほうがタイトルに相応しいと思える。「バラ色の人生」は彼女自身による作詞作曲だから。

この映画の公開にあわせてフランスで大変な反響を呼んだピアフのドキュメンタリーとコンサートライブの貴重映像DVD。映画は彼女の生涯を忠実に映画化されたものであることがよく分かる。また、圧倒的な声量、全身で表現する歌唱力。日本のシャンソン歌手たち、例えば越路吹雪でさえも、歌謡歌手、例えば美空ひばりでさえも影響を受けたということが納得できる。

エディット・ピアフ コンサート&ドキュメンタリー

東宝



エディット・ピアフ~愛の讃歌~ (2枚組)

東宝




ステージ・ネームの由来となった、「Piaf(ピアフ、小雀)/(英語)Sparrow」をアルバム・タイトルにつけたベスト・アルバムから。

The Voice of the Sparrow: The Very Best of Edith Piaf
Edith Piaf / / Capitol
スコア選択:
by knakano0311 | 2007-10-07 18:27 | シネマな生活 | Trackback(1) | Comments(0)
トラックバックURL : https://oyajijazz.exblog.jp/tb/7531695
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from 百恵ちゃん at 2008-03-02 17:02
タイトル : 百恵ちゃん
山口百恵... more
<< 我が家の歳時記  ~ 神無月の... 蘇州刺繍展をみて  ~その指先... >>