(甘樫丘より畝傍山を望む)
さあ、今年も花見の季節がやってきましたね。現役時代は、花見といえば「夜桜」、それも「宴」付きが当たり前となっていましたが、定年後はじっくりと櫻を観る、それも「少し遠出をしてでも見たい櫻、もう一度観たい櫻を!」と思うようになりました。今年我々夫婦が期せずして一致した「見たい櫻」は「明日香・甘樫丘の櫻」。わたしは20数年前のこの櫻の季節に、まだ健在であった両親をつれて、この丘に登ったことがあり、そんな想い出から、「もう一度この甘樫丘の櫻を見たい」とおもい、妻はかって恩師や親友と飛鳥めぐりをしたことがあり、「櫻の季節に登ってみたい」と思っていたようです。久し振りの飛鳥、甘樫丘。期待したとおり、満開の素晴らしい櫻と大和三山を望む素晴らしい眺めであった。かって蘇我氏の邸宅があったといわれるこの丘一帯は、国営飛鳥歴史公園として見違えるようにきれいに整備されており、散策路の一部は、万葉の植物園路として万葉集、古事記、日本書紀にうたわれた40種類の万葉植物を観察しながら散策が出来ます。そんな散策路で覚えた、我々にもなじみのある万葉集に詠われた木や花の歌を早速あげてみます。
安治佐為の 八重咲く如く 禰つ代にを いませわが背子 見つつ偲はむ (橘諸兄);あじさい
わが園の
李の花か 庭に落る はだれのいまだに 残りたるかも (大伴家持);李/すもも
昼は咲き 夜は恋ひ宿る
合歓木の花 君のみ見めや 戯奴さへに見よ (紀女郎);ねむのき
(橘寺と石舞台)
甘樫丘をくだり、天武・持統天皇陵~亀石~橘寺~石舞台古墳~岡寺~犬養万葉記念館~酒船石~飛鳥寺~水落遺跡 と約4時間の散策、前首相の魂胆みえみえのスローガンなどではなく、心から「美(うま)し国日本」を満喫した一日でした。
禅、侘び寂びに代表されるように、千年以上に及ぶ日本の都として、日本独自の文化を育み、完成させ、それが凝縮した京の都。中国からの政治、文化、技術をとりいれ 新しい国づくりへのおおらかな息吹と情熱や、いたるところに大陸やアジアの色と匂いを感じさせる奈良の都。そして、日本人の心に訴えかけてくる「原風景」ともいえる飛鳥の、のびやかでゆったりとした風景。とりわけ私が飛鳥に心惹かれるのは、日本人として私の持つ「血脈」や「DNA」が、飛鳥にこよなくサウダージ、郷愁を感じさせるのかもしれない・・・・。
万葉集を愛し、全国の万葉ゆかりの地を生涯歩き続けた犬養孝。飛鳥には彼の功績を偲ぶ「犬養万葉記念館」があるが、万葉の入門書として、昭和48年にNHKで放送されたものを書にまとめた「万葉の人びと」あたりがおすすめか・・・。
万葉の人びと
犬養 孝 / / 新潮社
ISBN : 4101261016
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こんな飛鳥の春の、のどかな風景に包まれると、「芸能山城組」が、「刈干し切唄」、「わらべ唄」などの懐かしい日本の民謡をパフォーマンスする「やまと幻唱」を久し振りに聴いてみたくなった。
やまと幻唱
芸能山城組 / / ビクターエンタテインメント
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