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大屋地爵士のJAZZYな生活

遠回りの愛のかたち  ~最近観た映画から~

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今年前半に見たすばらしい映画作品の中から、周りの人の事情や、時の政治、情勢などによって、遠回りをしてしまった愛の姿を描いた二編を紹介したい。

最初は邦画、篠原哲雄監督「山桜」。この作品は藤沢周平の同名短編小説を、映画化したものであるが、私はすでにこの作品を小説で読んでいたのと、演劇「さらば我が愛 覇王別姫」で東山紀之のファンに妻が化したため、封切りを待ちわびていた作品でもある。
話は、江戸時代後期の小藩を舞台に、不幸な結婚生活を送る女性が、ある運命的な出会いを経て、絶望的だった人生に光明を見いだしていく姿を静かな映像で描いていく。不幸な結婚生活に耐える野江(田中麗奈)はある日、1本の満開の山桜を見つける。枝に手を伸ばすと「手折って進ぜよう」と1人の武士(東山紀之)が現れるが、彼は野江が今の婚家に嫁ぐ前に縁談を申し込んできた相手、手塚弥一郎だった。自分を気遣ってくれる人物の存在に勇気づけられる野江だったが、手塚は悪政をたくらむ藩の重臣を斬ってしまう。「あなたは少し回り道をしただけですよ」という母の言葉にすくわれる、手塚を慕いはじめた野江・・・。
初時代劇という田中麗奈。「夕凪の街、櫻の国」などで急成長著しい彼女が、抑えた芯の強い女性を好演。母役の壇ふみ、弥一郎母役の富司純子が凛とした日本女性の美しさをみせてくれる。彼女を温かく遠くから見守ってきた若侍に「東山紀之」。「武士の一分」の木村拓哉をはるかに凌ぐ素晴らしさ。やっぱり「醤油顔」にはさすがの「キムタク」も負けるか・・・。
多分北信濃か、東北地方でロケしたのであろうか、美しい日本の自然。この物語にふさわしいすくっと経つ一本の山桜。廻りきた明るい春の日差しと櫻で結末を暗示するラストシーン・・・。久し振りに見た「藤沢周平」の原作と同じ静かな感動を味わえた時代劇であった。
全編を通して流れる美しいピアノ・ソロは武部聡、静かな余韻をもたらすエンディング・ロールに流れる歌は、人気歌手「一青窈」による主題歌「栞(しおり)」。

原作本は、最近はすっかり「山本周五郎」の後継者と目されている「藤沢周平」の「山桜」が所収されている「時雨みち」。

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時雨みち (新潮文庫)
藤沢 周平 / / 新潮社
ISBN : 4101247099
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主題歌「一青窈」がうたう「栞」は、最新のアルバム「Key」に収録されている。

遠回りの愛のかたち  ~最近観た映画から~_b0102572_0284873.jpg
Key(DVD付)
一青窈 / / Columbia Music Entertainment,inc.( C)(M)
ISBN : B00127ISVS
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もう一つは、第80回アカデミー賞で7部門にノミネートされたジョー・ライト監督「つぐない」。

現代イギリスを代表する作家「イアン・マキューアン」のベストセラー小説「贖罪」を、ジェーン・オースティンの世界を見事に映画化した『プライドと偏見』のジョー・ライト監督が完全映画化。幼く多感な少女のうそによって引き裂かれた男女が運命の波に翻弄(ほんろう)される姿と、うそをついた罪の重さを背負って生きる少女の姿が描かれる。運命に翻弄(ほんろう)される男女を演じるのは、『プライドと偏見』でも主演した「キーラ・ナイトレイ」と、『ラストキング・オブ・スコットランド』のジェームズ・マカヴォイ。
1930年代、戦火が忍び寄るイギリス。名門タリス家の長女セシーリア(キーラ・ナイトレイ)は、大学を卒業して家に戻ってきたが、兄妹のように育てられた使用人の息子、ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)と思いを通わせ合うようになる。しかし、愛を確かめ合う場を目撃した、小説家を目指す多感な妹ブライオニー(シーアシャ・ローナン)のついたうそが、ロビーに無実の罪を着せ、刑務所送りにしてしまう。4年後刑期と引き換えに従軍したロビーは独軍との戦闘で傷つき帰還の船を待つ。セシリーアは家を出、看護士となって彼の帰りを待っていた。ブライオニーもまた看護士見習いとなり、姉とロビーの物語を書き始め、あの嘘をわびる決心をする・・・・。
時は経って1997年。77歳、有名作家となったブライオニーは新作「つぐない」について、TV局のインタビューを受け、60年をたどる「つぐない」について語り始める・・・・・。そして、罪は償えたのか・・・。

主演は「これほどにきれいな女性がいるのか」と思わせるほど美しい「キーラ・ナイトレイ」。そしてラストのわずかなシーンに出演する、「バネッサ・レッドグレイブ」。老いてはいるが圧倒的な存在感と演技。そして、美しいイングランドの自然をバックに壮大なスケールと切なさでジョー・ライト監督が描く愛の大河ロマン。
この映画も全編流れる美しいピアノが、雰囲気を一層盛り上げているが、音楽は前作、「プライドと偏見」も担当した「ダリオ・マリアネッリ」。ピアノを演奏するのは「ジャン=イヴ・ティボーデ」。

贖罪 上巻 (1) (新潮文庫 マ 28-3)
イアン・マキューアン / / 新潮社
ISBN : 4102157239
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映画「つぐない」オリジナル・サウンドトラック
サントラ / / ユニバーサル ミュージック クラシック
ISBN : B0012PYG66
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この二作品、いずれも年末の私家(爵士)版2008年シネマベスト10に残るであろう傑作映画であると思う。
だけど、こんな形の愛の姿はもう時代遅れですか?
by knakano0311 | 2008-07-11 08:56 | シネマな生活 | Comments(2)
Commented by Tner-Harold at 2008-07-11 11:28
貴方のブログは素敵ですね。
Commented by knakano0311 at 2008-07-11 12:18
ありがとうございます。還暦過ぎてもなかなか青臭い気分が抜けなくて・・・
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