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大屋地爵士のJAZZYな生活

もしもピアノが弾けたなら(9)   ~ 至福のハンガリアン・ナイト ~

もしもピアノが弾けたなら(9)   ~ 至福のハンガリアン・ナイト ~_b0102572_1836543.gif(写真は小ホール、芸術文化センターHPより)

「ロバート・ラカトシュ」、なにわのJAZZレーベル澤野工房がいちおしの若手JAZZピアニスト。
1975年ハンガリー、ブタペスト生まれ。まだ33歳の気鋭のアーティスト。
聴いた瞬間に「やばい!!」と直感的に感じるアーティストが過去にも何人かいましたが、彼もその一人でした。2週間ほど前に初めて友人の薦めで聴いてはまり、7月24日に初来日コンサートがあるの知り、速攻チケット予約し、コンサート「Robert Lakatos Trio & Solo」に行ってきました。

コンサートがあったのは、あの大震災から10年後、兵庫県の文化復興のシンボルとして阪急西宮北口駅にオープンした、芸術監督を「佐渡裕」が務める兵庫県立芸術文化センター。地元住民の熱い支持やボランティアをうけ、大きな成功を収め、芸術文化の新しい発信拠点となった大中小3ホールのうち、座席数約400の小ホールで開催されました。
ユニークな変則八角形のドームで、床、壁、天井、座席すべて木材で覆われたアリーナ形式のホール。そのため、パフォーマーの一挙手一投足が間近に見え、息づかいまでもが聴こえてきそうな客席と舞台の一体感に長け、ピュアーで自然の音に包み込まれるような、ラカトシュには最もふさわしいと思われるようなホール。JAZZ、しかもそんなに有名だとは思われないアーティストなのに、ほぼ満席で、我々とほぼ同世代のご夫婦連れが多かったが、彼の音楽性のためか、意外と若い女性客が多かったことにびっくり。

演目は「You and The Night And The Music」からはじまり、トリオ、ソロを交え、今までのCDに収録された「アルマンド」、「エスターテ」、「フラジャイル」など美しく煌くおなじみの曲が中心で、あっという間の2時間であった。ラカトシュは、私がピアノ・トリオに魅かれる、或いは望む四要素、「美しさ」、「切なさ」、「心に届く深さと力強さ」をすべて持っている。ピアノ・トリオに慣れ親しんでいるベテランだけでなく、これからピアノ・ジャズを聴いてみようかと思っている人にも是非おすすめのアーティストである。先の四要素を持っているがゆえに、決してイージーではなく心に響いてくるはずだ。クラシックも好きな人なら、なおさらであろう。

アンコールの「ブルーモンク」にもびっくりしたが、この日の演奏曲のなかに「チャーリー・パーカー」の曲が2曲ほどあったが、かれもパーカーを尊敬しているみたいで、美しいであるばかりでなく、その根っこに力強いビ・バップへの憧れが脈打っていることも垣間見ることができた。

ラカトシュは、ハンガリー語とドイツ語しかしゃべれないらしく、終始無言で、(MCはドラムのドイツ人ヴァイスが担当していたが)相撲取りかと思う大柄な体格で、スタンウエイが大変小さくみえた。しかし、いったん弾き始めると、その鮮やかなタッチの指先から紡がれる音楽は、無骨な外観からは想像できないくらい美しい。やっぱり、ロバート・ラカトシュ、今後、眼いや耳を離せないJAZZピアニスト。至福の一夜であった。

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You And The Night And The Music
最新3rdアルバムで、今回の来日のメンバーによる演奏である。タイトル曲「You And The Night ・・・・」、「Fragile」、「Whisper Not」、など美しいスタンダードとスインギーな曲が絶妙な組み合わせで芳醇な雰囲気を醸し出す、きっと聴く場所を選ばない珠玉の一枚。


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Never Let Me Go
2作目でラカトシュの本領発揮、まさしく本物、王道であることを確信させるほどのできばえ。
なかでも、「Estate」は最高の聴きもの。


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So In Love
デビュー作であるが、この「Allemande」の美しさはどうであろう。かの寺嶋氏が「Jazz Bar 2005」に取り上げたのも分かる。そして「Zingaro」、「Yesterdays」と続けば、デビュー作にして、澤野レーベルの看板アーティストに間違いなく成長するであろうことを予感させるアルバム。


そして、偶然前の日に見たDVDは、今年見逃していたハンガリー映画、クリスティナ・ゴダ監督「君の涙 ドナウに流れ」。
第二次世界大戦以後、ナチの支配下であった東欧地域は、ソビエト連邦(現・ロシア)の支配下に入り、社会主義体制をとる事になる。 表面上、社会は平静を保っていたが、裏では秘密警察による厳しい言論統制や粛清が行われて居り、ポーランド、ハンガリー、チェコでは、自由を求める人々が蜂起しては、ソ連軍に制圧される、という事件が繰り返されていた。1956年に起こった、いわゆる「ハンガリー動乱」と、メルボルン・オリンピックの栄光の陰で繰り広げられた悲劇を描いた作品。
オリンピックに向けて水球チームのエースとして活躍するカルチは、学生デモを統率する女子学生ヴィキと出会う。革命を信じる彼女と接し、ソ連軍が市民を撃ち殺す光景を見たカルチは、自由のための戦いに身を投じてゆく…。若い男女の愛の物語を中心に、感動のストーリーは展開されますが、 ハンガリー国民の苦難の歴史を、50年以上も経った今、映画として描く事が出来たという歴史の背景にも思いを馳せる映画であった。


君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956 デラックス版
/ ジェネオン エンタテインメント
ISBN : B0017UE0PS
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彼の演奏は、ほとんどアップされていないが、その中で見つけたのが、コンサートでも演奏されたアルバム、「So In Love」から「Alemande」。 「Alemande - Robert Lakatos」

          


映画とコンサート。二夜連続、至福の「ハンガリアン・ナイト」であった・・・・・・。
by knakano0311 | 2008-07-26 11:40 | もしもピアノが弾けたなら | Comments(0)
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