「10月」が過ぎていく。9月でも11月でもない「10月」が足早に過ぎていく。この「10月」という言葉に私は特別の魅惑的な響き、あるいは郷愁にも似た感傷を感ずる。それはかって愛読した「レイ・ブラッドベリ」の短編集、「10月はたそがれの国(The October Country)」の影響であろう。その昔、青春時代にずいぶんとブラッドベリを読んだ。その中でも、「10月はたそがれの国」、「メランコリイの妙薬」、「黒いカーニバル」など、今風に言えばおしゃれなタイトルと、「奇妙な」としか言いようのない読後感によって、すっかりとりこになってしまったものだ。
「レイ・ブラッドベリ/Ray Bradbury (1920‐)」。イリノイ州生まれ。少年時代から作家を志して創作を続け1941年にSF専門誌でデビュー。1947年には最初の短篇集『闇のカーニバル』を刊行。O・ヘンリー賞を二年連続して受賞したほか、多くの賞を獲得。ポオの衣鉢をつぐ幻想文学の第一人者とされる。
「10月はたそがれの国」は、SFの抒情詩人といわれるブラッドベリの名声を確立した処女短編集「闇のカーニバル」の全編に、新たに五つの新編を加えた作品集。後期のSFファンタジーを中心とした短編とは異なり、ここには怪異と幻想と夢魔の世界がなまなましく息づいている。そして、「ジョー・マグナイニ」の挿絵12枚を付してさらに雰囲気を醸し出している決定版。1965年12月24日のクリスマス・イブに初版が発行されて以来、60数版を重ねている超ロングセラー。
10月、秋の黄昏時、急速に冷え込でいく空気、そこかしこにできる長く伸びた影と闇、そこから忍び出てくる瘴気、狂気、怪異、恐怖・・・。まさしく「逢魔が刻」といった感じの、この季節のこの時間を、ブラッドベリは、「10月が生み出す一瞬の異次元の国」と見立てたのだろう。
トリック鏡に己の巨人化した姿を映しては満足する小人の悲劇を描いた「小人」、自分の骨は自分以外の別なものに操られているのではという妄想を抱いた男の恐怖を描く「骨」、「病気で寝ています 訪問客歓迎」という札をぶら下げた犬が連れてきた客は誰、「使者」 ・・・・・。
10月はたそがれの国 (創元SF文庫)
レイ・ブラッドベリ / / 東京創元社
ISBN : 4488612024
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ファンタジーでもホラーでもないブラッドベリの世界は、闇、恐れなど異次元の世界に憧れていた当時の私の抱いていたやや鬱屈した心を捕らえて放さなかったのだ。ブラッドベリとは私にとってはある種のヒーリングでさえもあった。
そして、表題作ほか全22の短篇を収録する「メランコリイの妙薬」も愛読した一冊である。
メランコリイの妙薬 (異色作家短篇集)
レイ ブラッドベリ / / 早川書房
ISBN : 415208765X
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ブラッドベリ、ブラウン、ダール、マシスン、コリア、エリン、ラブクラフトとクトウルフ神話、ケルト神話、フォン・デニケン・・・・」など、青春時代に夢中になったものの、いつからか本棚の片隅に置き忘れられた「闇」や「影」を描く作家や作品たち。現実の社会を生きていく中で、徐々に忘れていったこれらの作家や作品を、もう一度読み返してみようかという気持ちになったのは、ひょっとしたら、10月というこの月に、再びパンドラの箱を開けてしまったからかもしれない。
このカテゴリーの文学の祖は、もちろん「ブラッドベリ」が衣鉢をついだといわれる「エドガー・アラン・ポオ」であるが、この二人のアメリカ人が描く物語に、アメリカの特徴とも言える明るい色彩を感ずることはない。むしろイギリス人作家だといわれてもまったく違和感がないくらいだ。特に「ポオ」に関しては父方の祖父がアイルランド出身ということもあり、「ケルト文化」の影響を色濃く感じてしまうのだ。そして「ブラッドベリ」についても・・・・・。
「ケルト文化」。 ローマ帝国がアルプス山脈を越えるまで、その北側はローマ人が「ガリア」と呼んだケルト人の世界であった。ケルト文化が、キリスト教とは別の流れの中にあるもうひとつのヨーロッパ文化といわれる由縁である。やがて、ローマ帝国とキリスト教文化が版図を拡大するにつれ、ケルト民族は、次第に西方や北方に追いやられ、ローマによる植民地化や文化破壊のため衰退していった。
現在では、ケルト文化は、ローマの植民地化を免れたアイルランド、スコットランドや、今でも英語とは別の言語を持つイングランドのウェールズ地方やコーンウォール地方、フランスのブルターニュ地方に色濃く残っている。ブリテン島が、フランス側からは今でもブリテン、ブリタニカの語源となる「ブルターニュ島」と呼ばれていることが、かって同一文化圏であったことを示しているという。鉄器、巨石、妖精、精霊、魔女、幽霊、女神信仰、神話、伝説、音楽などに独自の特徴を持つケルト文化は、いまなお、ヨーロッパ文化に大きな影響を与えているといわれている。たとえば、ハロウィンもその名残らしいし、文学でいえば、トルーキンの「指輪物語」などはその代表例であるというし、ベストセラー「ダ・ビンチ・コード」の後半の部分にはケルトの女神信仰がストーリー展開のベースになっているといわれている。
フランス・ブルターニュ地方を中心に、伝統のケルト文化と現代音楽の融合を目指して活躍するソロ・JAZZピアニストに「ディディエ・スキバン/Didier Squiban」がいる。その叙情的なタッチは、JAZZというカテゴリーに納めるにはすわりが悪いし、かといってクラシックでも民俗音楽でもない。勿論それらの要素はすべて内包しているのだが・・・・。俗っぽく言うと、ヒーリング音楽、あるいはフランス版ウィンダムヒルとでもいえば感じがつかめるだろうか?
その「ディディエ・スキバン」が奏でるソロ・ピアノアルバムは「ROZBRAS/ロスブラス~12の色彩」。「MOLENE/モレーヌ~この世の果て」、「PORZ GWENN/ポルス・グウェン~白い港」に続くピアノソロ3部作の完結編だそうだ。
いかにもヒーリング音楽、それらしさを感じてしまう部分もあるのだが、私は就寝時などによく聴いているが、癒されることは間違いない。しかし、最近つとに「予定調和」的な流れに身を委ねるのが心地よくなってきたのも老いの予兆かもしれない。
SACD/CDのハイブリッド仕様だけにピュアな音質は際立って素晴らしい。
ロスブラス~12の色彩(ソロ・ピアノ三部作(3))
ディディエ・スキバン / / avex io
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「Didier Squiban - Image 5 (アルバム「Rozbras」より」
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