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大屋地爵士のJAZZYな生活

もしもピアノが弾けたなら(17)   ~ 偉大なるアナログ楽器、ピアノ ~

私のヨーロッパJAZZへの傾倒のきっかけは、「ジャックルーシェを除くとそれはヨーロピアン・ジャズ・トリオであった」とこのブログでも何回か書いたと思う。ルーシェは「バロック・ジャズ」という極めて狭いカテゴリーということで除外していたのだが、よく考えてみるとこれはおかしな話で、ヨーロッパジャズのカテゴリーを支えている大きな要因がクラシック音楽の影響であることを考えるとやはり「ジャック・ルーシェ」はヨーロッパ・ジャズの偉大な先達の一人で、私をヨーロッパ・JAZZ・ピアノへ誘ったきっかけのひとりとして、ぜひ挙げておかなければならないだろう。

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「ジャック・ルーシェ」。1934年生まれ。パリ国立音楽院をトップの成績で卒業後、50年代の終わりに「Play Bach Trio」を結成したが、その後、この「Play Bach」シリーズで15年間で600万枚を超えるレコードを売り上げるほどの大成功を収めた。「Play Bach」をはじめて聴いたときの鮮烈な印象は今でも忘れない。バロック音楽とJAZZの相性のよさ、ヨーロッパのJAZZを初めて知った。しかし、どういうわけか74年以降バッハを断ち、70年代の終わりには、一度演奏活動から引退し、プロヴァンスに引きこもり、作曲活動やレコーディング活動をしていた。その後、1985年のバッハ生誕300年を期に、再び脚光を浴び、音楽活動を再開することとなった。以後バッハだけでなく、「ヘンデル」、「モーツアルト」、「ラベル」、「サティ」、「ショパン」、「ベートーベン」、「ドビッシー」、「ビバルディ」など精力的にアルバムを送り出している。以後、彼の後に続いて、クラシックを取り上げるJAZZアーティストは今でも多い。

何を差し置いても、「Play Bach」であるが、当時、たしか第1集から6集まで出されたが、初期作品よりオススメは、なんと言っても録音のいいデジタル録音版の「デジタル・プレイ・バッハ」。’84年12月に録音したこの作品で、見事にジャズのバッハ弾きのトップ・アーティストとしてカムバックした。初期の「Play Bach」に比べ、より流麗で、JAZZYに洗練されたアルバムになっている。50歳を迎えてリリースしたこのアルバム、まさに「バッハ弾き」の真骨頂が味わえる。鮮烈の「Play Bach 1」と聴き比べてみるのもいいだろう。

デジタル・プレイ・バッハ
ジャック・ルーシェ / / キングレコード
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プレイ・バッハ(1)
ジャック・ルーシェ / ユニバーサル ミュージック クラシック


「AIR ON THE G STRING(G線上のアリア) - Jacques Loussier」

          

「ドビッシー/月の光」、ソロでショパンのノクターン全曲21番に挑戦した「インプレッションズ・オン・ショパンズ・ノクターンズ 」。甘く華麗だがJAZZの基本を損ねることはないこれらのアルバムもオススメ。

月の光
ジャック・ルーシェ / / ユニバーサルクラシック
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インプレッションズ・オン・ショパンズ・ノクターンズ
ジャック・ルーシェ / / ユニバーサルクラシック
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「Chopin/Nocturnes op.9 -Jacques Loussier」

          


そして現代のパリの雰囲気や香りをピアノにのせて届けてくれるピアノ・トリオは「セルジュ・デラート・トリオ」。カフェの片隅で聴きながら、会話を楽しんでいるパリの恋人達が眼に浮かぶよう。
小粋で楽しいパリのJAZZ的エスプリを感じさせる快作。
このトリオは近日、来日が予定されており、12月19日に西宮の兵庫県芸術文化センターで行われるコンサートが大変楽しみである。


もしもピアノが弾けたなら(17)   ~ 偉大なるアナログ楽器、ピアノ ~_b0102572_11342664.jpgセルジュ・デラート/French Cookin'






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セルジュ・デラート/Swingin’Three







【閑話休題】  

「ピアノ」はなぜ「ピアノ」と呼ばれるのか?私のブログ記事(「もしもピアノが弾けたなら(1)   ~ピアノ、この小宇宙~」参照)を補足し、「デジタル・プレイ・バッハ」というアルバム・タイトルに隠された暗喩を想起させるような、面白い視点のブログ記事を見つけたので長いが、以下引用してみる。(コメント先が分からなかったので勝手に引用しました。お許しを・・・)

バロック(仏英: baroque)という語はポルトガル語 barocco (いびつな真珠)が由来であるとされ、音楽史でバロック時代と言っているのは、1600年の劇音楽の誕生から、バッハの没年である1750年までの150年ほどの期間である。ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685年 - 1750年)は、西洋音楽史上、バロック音楽を集大成した最も重要なバロック音楽の作曲家と考えられる。

そもそもバロック音楽の特徴とは何か。
①通奏低音音楽である。
②オーケストレーションが古典派と異なる。
③現在でいう古楽器を用いる。
④ソナタ形式がまだない(バロック期の音楽でいう「ソナタ」は古典派のそれとは全く異なる)
⑤即興演奏的要素が強い

しかし何といってもバロック音楽とは何かと言われればそれはデジタルである、というのが一番簡潔明瞭な言い方であると思う。
不連続性、断続性がデジタルの特徴であるが、バロック音楽もまたこうした特性をもつ。すなわち音の大きさが「フォルテ」か「ピアノ」かで、その間がない。これにはバロック時代に主流であったチェンバロやオルガンの存在が絡んでいる。すなわち当時のチェンバロやオルガンは鍵盤を押すと音がでるが、鍵盤を強く押しても弱く押しても音の大きさは一緒である。音の大きさを打鍵の強さで変えることができなかった。
しかしこれではつまらない。何とか音量を変えたい。そのために楽器の構造を工夫した。チェンバロならたとえば鍵盤を2つ以上にする。それぞれ構造を変えて音が大きい鍵盤と小さい鍵盤を作っておく。フォルテの指示の部分は前者で、ピアノの指示の部分は後者で弾く。オルガンならばストップを変える。ストップの入れ替えにより、音の大きさを任意に変えることが可能である。

さて18世紀になって鍵盤楽器に革命が起こった。ピアノの登場である。この楽器は発明当初はチェンバロと外見はそっくりであったが、その音を作り出す構造がまったく異なっていた。チェンバロが弦を引っ掻くようにして音を作っていたのに対し、ピアノは弦をハンマーで叩くのである。前者の場合は打鍵の力の強弱で音の強弱を作り出すことができなかったが、後者ではそれができるようになった。「ピアノ」の当初の命名であった、「ピアノフォルテ」という名の由来は打鍵の強弱により音をピアノにもフォルテにもできる、ということであったのである。
 
このピアノの登場により、作曲法そのものが劇的に変化した。すなわちクレッシェンド、デクレッシェンドという概念の登場である。ピアノから徐徐に音量を増大させフォルテにいたる、という芸当ができるようになったのだ。こうしてアナログ音楽が誕生したわけであり、イコール古典派音楽の誕生となった。西洋音楽の1750年前後はまさにこうした音楽の革命期であった。アナログ音楽の登場とともにオーケストレーションも劇的に変化し、カンナビヒ、シュターミッツなどのマンハイム楽派などがまったく新しい形式の音楽を作曲するようになり、のちにそれがハイドン、モーツァルト、ベートーベンにより完成された。
(以上ブログ記事「バロック音楽はデジタルである」からの引用)

ピアノが発明されたのが、今から丁度300年前。引用したブログ記事を参考にして屁理屈をこねると、「音楽史的にはデジタル時代であるバロック音楽を、「ピアノ」と名づけられた偉大なる発明によるアナログ楽器により、現代のピアニストがJAZZとして演奏し、デジタル録音された音源を、CDというデジタル・メディアに収録されたアルバムが、『ジャック・ルーシェ/デジタル・プレイ・バッハ』である。」

ああ、ややこしい・・・・。

しかし、ヨーロッパ・ピアノ・ジャズは、音楽史的に言えば、ピアノが発明されたヨーロッパでこそ、アメリカに対抗して、アイデンティティや正統性を主張できるJAZZのカテゴリーであるとも言えるのだ。その意味で、「ジャック・ルーシェ」が「バロック・ジャズ」を創始したことは、必然の結果であったといえる。

by knakano0311 | 2008-12-11 13:05 | もしもピアノが弾けたなら | Trackback | Comments(0)
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