人気ブログランキング |

大屋地爵士のJAZZYな生活

2012年 09月 13日 ( 1 )

鏡の中の煌き

鏡の中の煌き_b0102572_9491958.jpg
最近読んだ本に、ポーランド人の気質について、こんなことが書いてあった。「ラテンの気質を持つスラヴ人、スラヴの中のラテン民族ともいわれる」、「ヨーロッパの中で最も信心深いカトリック国」、「信念を貫く頑固一徹の気質」 ・・・。そして、「ショパンが好きで、ショパンをポーランドの心として愛している」。5年に1回、ショパンの命日である10月17日の前後にわたって、首都ワルシャワで開かれる国民的イベント、「ショパン国際ピアノコンクール」において、「田中希代子」(1955)、「中村紘子」(1965)、「内田光子」(1970)あたりから、毎回のように日本人が上位に入賞しているが、「なぜ東洋の異文化の国が、あれほどまでにショパンを理解でき演奏できるのだろうか」という感嘆の声と同時に「不思議だ」という声も多く聴くという。

善意の架け橋―ポーランド魂とやまと心

兵藤 長雄 / 文藝春秋


鏡の中の煌き_b0102572_10105378.jpg
さて、「アンナ・マリア・ヨペック/Anna Maria Jopek」。ポーランドを愛し、ポーランドの魂を歌う歌手。この本を読みながら、私が勝手に想像しているヨペック像を思い浮かべ、「うんうん」とうなずく箇所が何度かあった。私が把握している限りでは、ゲスト・ボーカルやコンピを除くと、CD・DVDリリースは全23作。再発、組版、バージョン違い、DVDなどを除くと実質、17枚くらいであろうか。その大方を聴いてみたのだが、「ポーランド語で歌う」、「いわゆるスタンダードは歌わない」ということもあるが、彼女を単なる「JAZZ歌手」というようにカテゴライズできない。やはり「ヨペック・ワールド」としか、カテゴライズできないことを改めて認識したのである。

その中で、最新三部作、「HAIKU(俳句)」、「Sobremesa」、「POLANNNA」が、いずれも甲乙つけがたい最高傑作ではないかと思う。それに、ヴィジュアルな魅力とヨペック・スタイルを完成させたといっていい、「ファラット/Farat」(2004)、「パット・メセニー/Pat Metheny」とのコラボにより世界への道を開いた「Upojenie」(2008) 、そして初期の総集編で今のスタイルの原型といってもいい、「Nienasycenie」(2002)あたりを、その次に加えてもいいかもしれない。

さて、その三部作の個々については、拙ブログや風呂井戸さんのブログ記事(参照;アンナ・マリヤ・ヨペクの近作3部作アルバム検証シリーズ、「アンナ・マリア・ヨペクAnna Maria Jopekの魅力と日本(和)の世界の合体 : 「HAIKU(俳句)」」「POLANNA」;「3部作「POLANNA」・「HAIKU(俳句)」・「SOBREMESA」それぞれの完成度の高さに圧巻」「SOBREMESA:締めくくりのポルトガル文化から生まれた世界は」などにくわしいので、そちらを参考になさってください。

鏡の中の煌き_b0102572_1011868.jpg

ヨペクのこの最新3部作は、「LUSTRA」というタイトルのBOXセットでもリリースされている。3部作は、いずれもリリースが、2011年10月10日の同時発売、そしてBOXセットは、10月26日となっている。このことからすれば、やはり、この3部作は、ワン・セットとして考えるべきであると思う。さすれば、「POLANNNA=波蘭(ポーランド)」、「Sobremesa=葡萄牙(ポルトガル)」、そして「HAIKU=日本」をテーマに選んだ意味が、そこにはあるはずである。「LUSTRA」とは、ポーランド語で「鏡」という意味。そのタイトルにこそ込められた意味合いを探るヒントがあるのではないだろうか。「Sobremesa」が、ポルトガルは世界遺産の街「シントラ」での録音、あとはワルシャワでの録音であるが、「HAIKU」が2010年11月、「Sobremesa」が2011年2月、「POLANNNA」が2011年4月となっている。スタジオやアーティストの都合などがあるので、順番にはあまり意味がないとは思うものの、「POLANNNA」の録音を最後にしたのは何らかの意味があるような気がする。

鏡の中の煌き_b0102572_23204969.jpg

Lustra Box

Anna Maria Jopek / Universal Poland



「ラテンの気質を持つスラヴ人」と呼ばれるポーランド人、国民の90%以上がカトリックであるポーランドとポルトガル、1974年に「カーネーション革命」とよばれる、ヨーロッパ史上最長の独裁体制を打倒し民主化を勝ち得たポルトガル、長い間他国の支配下にあったポーランド。そしてどこかスラブ的な哀愁をもつファド、かってはポルトガルの植民地だったブラジル。こんなことから、ヨペックがポルトガルを第2の故郷と呼び、ファドやボサノバに強い関心を抱く理由も分かるような気がする。

一方、日本。ポルトガルは、かつては大航海時代の先駆者であり、そのためヨーロッパで最初に日本や中国など東アジアとの接触を持った国家である。1543年、種子島にポルトガル船が漂着し、日本に初めて鉄砲とキリスト教が伝えられたとされ、1549年には、「フランシスコ・ザビエル」が来日、徳川幕府によって、キリスト教が禁止され、1639年の鎖国令でポルトガル船の入港を完全に禁止され、オランダにとって代わるまで、日本とポルトガルとは文化的にも宗教的にも唯一深いつながりがあった欧州の異国だったのだ。このことをヨペクは知っていたのだろうか?

鏡の中の煌き_b0102572_22271236.jpg

2005年、愛知万博で行われた日本公演で初来日。すっかり日本文化に魅せられたヨペック。そしてショパンを通じてのピアニスト「小曽根真」との出会いがあり、彼女のHPを読むと、その後の数度の来日によって、日本、日本文化に対する関心を高めていったようにも思える。そう考えてみると、3部作のテーマととして、ポルトガル、日本、ポーランドを選んだのも、決して偶然ではないのではと思えてくる。

彼女が内面から強いシンパシーを感じているポルトガル、そしてヨーロッパとは対極、いや異極にあり、その繊細な独自の文化に尊敬を感じている日本。この二つの異文化の「鏡」に自己の音楽観を投影し、その反射光を自らのポーランドという「鏡」に再投影することにより、自己の音楽の再確認と集大成を図ったのではないだろうか。さすれば、この3枚の鏡のようなディスクは、互いに反射しあい、煌(きらめ)きを放ち、聴くものの心にヨペクの魂を映し出すことに見事に成功したといえるだろう。

アルバム、「POLANNNA=Polska + Anna/ポーランドの魂を歌うアンナ」から「Z Tęsknoty. Kujawiak/憧れ。 その旋律」を ・・・。

「♪ Słyszę, że jesteś tu.  私はあなたがここにいると聞きました
   Czuję Cię blisko.     あなたが近くにいるのを感じています
   Czy pozwolisz mi zobaczyć Twoją czułą twarz?  私の愛に満ちた顔が見えますか?
   Brak mi spojrzenia Twych oczu.     私にはあなたの眼が見えません
   Tęsknię za barwą, melodią Twoich słów. 
                        あなたの目の色も声のトーンすらも忘れてしまいました
   Czekam z nadzieją na noc, na sen,  今夜こそあなたに逢えると楽しみにしていたのに
   By w nim móc przytulić Cię znów.    逢ってあなたを抱きしめることができると
   A Ty -      でも、あなた ・・・
   Od lat nie przychodzisz.    あなたは今日もまたこなかった
   Czy nie chcesz, bym pytała Cię,   きっと、あなたは聞きたくないのね
   Jak tam jest?         なぜなの?と私が尋ねるから     ♪」 
                                 (自動翻訳機によるいい加減な拙訳)

「Anna Maria Jopek - Z tęsknoty. Kujawiak」

          
by knakano0311 | 2012-09-13 23:28 | おやじのジャズ | Trackback | Comments(0)