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大屋地爵士のJAZZYな生活

タグ:カサンドラ・ウィルソン ( 6 ) タグの人気記事

憂鬱な春という人も

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ウォーキングをしていると、「ジンチョウゲ(沈丁花)」の香りが漂ってくる。我が家の鉢植えもそうだが、蕾が相当膨らんで来たのである。やはりこの香りは強いので、すぐにそれとわかる。

そして春になるとと、気象予報に花粉情報が加わるようになる。私は幸いなことに花粉症とは無縁であるが、妻を始め知り合いにも、花粉症に悩む人は多い。春が来て暖かくなり、喜ぶとは裏腹に、花粉症が始まる憂鬱さも感じるようである。

さて、春の歌。スタンダードには、ストレートに春の喜びを歌った歌は少ないとして、「Spring Is Here/邦題;春が来たと云うけれど」、それにちょっと切ない「Spring Will Be a Little Late This Year」を紹介しましたが、今宵も続けて「ひねくれた春の歌」です。その決定版がこの歌、「Spring Can Really Hang You Up The Most」(1955)。意味は「春は私を最も憂鬱にさせる」。「憂鬱な春」なんて ・・・。いやいや、これはひねくれたタイトルですね。

【 Spring Can Really Hang You Up The Most 】
                       Lyric:Fran Landesman  Music:Tommy Wolf

「♪ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   Spring this year has got me feeling     今年の春は私をまるでレースに出られない
   like a horse that never left the post.     競走馬みたいな気分にさせる
   I lie in my room staring up at the ceiling.  部屋に寝転がって天井を見上げるばかり
   Spring can really hang you up the most.   本当に憂鬱な春

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   Spring is here, there’s no mistaking.      間違うことなく今年も春が来た
   Robins building nests from coast to coast.  こまどり達はあちこちで巣を作る
   My heart tries to sing so                私も心の傷を悟られまいと
           they won't hear it breaking.       歌を歌ってみようと努力してみる
   Spring can really hang you up the most.    なんて最悪で憂鬱な春

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・         ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ♪」

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まずは大姉御、「カサンドラ・ウィルソン/Cassandra Wilson」。アルバムは、「Loverly」から。アメリカ、ミシシッピ州ジャクソン出身の女性ジャズ歌手、シンガー・ソングライター。1996年度、2008年度のグラミー賞最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞の受賞者で、1990年代を代表するジャズ歌手の一人である。

私のご贔屓の女性シンガーのひとりで、ジャズとブルースのスタンダード・ナンバーからポップ、ロックまで歌う。そのレパートリーの広さから、「千手観音」と、あるいは女性としては非常に低い声域を持ち、ブルージーな独特の声質と、その強い「目ヂカラ」が故に、私は「現代の巫女」などと勝手に名づけている。

Loverly

Cassandra Wilson / Blue Note



「Cassandra Wilson - Spring Can Really Hang You Up The Most」

          

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北欧で、今後もっとも期待される若手イチオシのシンガーが、デンマーク出身の「シーネ・エイ/Sinne Eeg」。1977年デンマーク生まれ。1997年20歳の時に、国立音楽アカデミーで音楽を学ぶ。2003年に自身の名を冠したアルバムでデビュー。以後、2007年にリリースした、全曲オリジナル楽曲に挑戦したセカンド・アルバム「Waiting for dawn」、2010年の「Don’t Be So Blue」が、その年の「デンマーク音楽賞/最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム」を獲得したという。日本のジャズ界に大きな反響を巻き起こしたのは、第4作、「ブルーな予感」であった。バラードに彼女の力はいかんなく発揮されるが、バラード良し、軽快なスイングも良し、オリジナル良し。ときに哀愁が漂うクール・ビューティ。(参照拙ブログ「北欧美女シンガー図鑑(その6) ~神戸で見つけた美しきバラード唄い~」) アルバム、「Remembering You」(2011)から。

Remembering You

Sinne Eeg / Red Dot Music



「Sinne Eeg - Spring Can Really Hang You Up The Most (Feat. Marc Berthoumieux)」

          

そして、かって’80年代ロリータ・ヴォイスで人気を博したPOPS系の「リッキー・リー・ジョーンズ/Rickie Lee Jones」のアルバム、「Pop Pop」から。賛否はきっと相当分かれるでしょう。でも「ひねくれた春の歌」ですから、こんな歌い方もアリと思います。

Pop Pop

Rickie Lee Jones / Geffen Records



「Rickie Lee Jones - Spring can really hang you up the most」

          

インスツルメンツからも。サックスの「Houston Person」とベースの「ロン・カーター/Ron Carter」とのデュオで。アルバムは、コンピですが「Jazz for a Rainy Afternoon」から。

Jazz for a Rainy Afternoon

Various Artists / 32. Jazz Records



「Spring Can Really Hang You Up The Most - Houston Person」

          
 



 
by knakano0311 | 2016-03-07 10:04 | 音楽的生活 | Trackback | Comments(0)

終戦の日に「半藤一利/昭和史」を読む

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いつもの遊びの山。水の広場には、夏休みを迎えた子供たちが無心に遊んでいる。いやになるほど暑いが、平和な夏の風景が今年も目の前に ・・・。

「桑田圭祐」が歌っている。「♪ ・・・教科書は現代史を やる前に時間切れ ・・・♪」と。隣の国々が肩をいからせている。「正しい歴史認識を ・・・」と。そして、総理が語っている。「憲法改正が私の歴史的使命だ」と。この夏、ちゃんと「昭和史」を学んでみたい気になった。

「昭和史」について書かれた本はたくさんあるが、歴史学者のそれでは硬そうだし、政治家や政治学者の本では、なんとなく色がついてそうな気がする。私が注目したのは「半藤一利」氏。というのも彼の著書、「日本型リーダーはなぜ失敗するか」(文春新書)を読んで強い共感を覚えたからである。決断力に欠け、情報を軽視し、従来のやり方に固執して、責任をとろうともしなかった太平洋戦争の指揮官たちにみられる共通の悪弊を明らかにし、なぜ、こういうリーダーしか日本陸海軍は戴けなかったのかという著者の熱いメッセージに触れたからである。

日本型リーダーはなぜ失敗するのか (文春新書)

半藤 一利 / 文藝春秋



そして、「幕末史」( 新潮社)。この本は実に面白かった。黒船来航から西南戦争までの日本が大転換を遂げた時代を、「歴史の語り部」と呼ばれる著者が、分かりやすくひも解いてゆく。官軍、幕府軍側も含めて大きなうねりを、鳥瞰図的に語ってゆく。

幕末史

半藤 一利 / 新潮社



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そんなことから選んだのが「昭和史 1926-1945」(平凡社ライブラリー)。これは、「昭和史 戦後篇 1945-1989」(平凡社ライブラリー)と対になっている。1926年から始まる「昭和」、その中で終戦までの20年間、半藤の目で見た昭和を「幕末史」と同じように授業形式の語り下ろしで、わかりやすく語ってゆく。小事件の積み重ねや、処理の判断ミス、リーダーシップと責任感の欠如の中で、国民的熱狂とマスコミの扇動に押され、陸軍を中心とした軍隊に引っ張られて、負ける戦争に突入していった日本。何が間違っていたのか、どうして歯止めがかからなかったかを、この本は教えてくれる。憲法改正、自衛隊の国防軍化や集団的自衛権の容認の気運や兆しに不安を感じる反面、隣国の声高で強引な物言いや理不尽な行動にも反発を感じている私が今、「昭和史」を学ぶことの意義を見いだせた本と言っていいだろう。

人をそう簡単に「愚かもの」とは決めつけられないが、この本を読むと、「敗れるべくして敗れた戦争」への道を歩んでいった愚かな国家指導者たちが浮かび上がってくる。昨今の気がかりな状況を思うにつけ、決して同じ道を歩むことなかれと思わずにはおれない。

「3.11は第2の敗戦」と語る半藤氏。敗戦の日に「半藤一利/昭和史 1926-1945」を読了 ・・・。半藤氏の結論、「それにしても何とアホな戦争をしたものか。・・・ ほかの結論はありません。」 そして、最大の戒めは「国民的熱狂をつくっては、いけない」ということであった。

昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)

半藤 一利 / 平凡社


 
終戦の日にあたり、全戦没者、全犠牲者に哀悼を ・・・。
 

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さて、孤高のディーヴァ、その魔術的とも言える歌の凄みと独自の世界観は、まさしく現代の巫女、シャーマン。私が「千手観音(The Black Muse With a Thousand of Music Hand)」になぞらえる「カサンドラ・ウィルソン/Cassandra Wilson」に、「A Day in the Life of a Fool(愚か者の一日)」という歌唱がある。収録されているのは、スタジオ録音とワルシャワ、セビリア、グラナダでのライヴ録音を融合したアルバム、「シルヴァー・ポニー/Silver Pony」。この歌の原曲は、「黒いオルフェ/カーニバルの朝」で、カサンドラにしては珍しい選曲である。あの「フランクシナトラ/Frank Sinatra」さえも、ボサノヴァに大きな影響を受け、英語詩で歌った曲でもある。(1967リリース「My Way」に収録) 英語詩には、「この素晴らしき世界」や「バードランドの子守歌」などで知られる「ジョージ・デヴィッド・ワイス/George David Weiss」が。「カーニヴァル/Carnival)」の題で1963年に書き、「ペリー・コモ/Perry Como」が歌ったバージョンと、「引き潮」などが代表曲の「カール・シグマン/Carl Sigman」が「A Day in the Life of a Fool」の題で書き、「フランク・シナトラ」が歌った、失恋した男の心情を歌った二つバージョンがある。しかし、なぜ後者がこんな内容の詩になったのか、それはちょっと判りませんが ・・・。

Silver Pony

Cassandra Wilson / Blue Note Records



「♪ 愚か者の一日 悲しくて長い孤独な一日 ・・・ ♪」。何か身につまされませんか?

「cassandra wilson - a day in the life of a fool」
 
          
 
 
by knakano0311 | 2013-08-16 10:03 | 想うことなど・・・ | Trackback | Comments(0)

The Diva Has A Thousand Hands. ~唐招提寺・千手観音立像~

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(「第62回正倉院展」HPより)

今年は「平城京遷都1300年」の年である。いま、奈良ではそれを記念して、いろいろな行事やキャンペーンが大々的に行われている、NHK-TVでもいくつもの特別番組を組んでいるが、関西に住んでいる私は、殆ど毎日のように、それに関するPR番組やニュースにお目にかかる。秋の奈良へ行きたいとは思うのだが、あの大変な人出を想像すると、「奈良好き」の私もさすがに敬遠気味で、今年は奈良を訪ねるのは控えておこうかと思ってしまう。しかし、10月23日からは、定年後は毎年欠かさずに訪れている「正倉院展」が始まるので、正直言って、行こうかどうか迷っているのである。

西暦710年わが国の本格的首都が「奈良」の地に誕生した。「大宝律令」が制定され、律令を基本とする統一国家が成立、また最古の歴史書「古事記」、「日本書紀」などが編纂され、日本の国家としての基本的枠組みが確立した時期でもある。また、正倉院御物に見られるように、朝鮮半島、大陸との盛んな交流を通じ、ユーラシア各地から、技術、文化、文明がもたらされ、わが国の古来の文化と融合して、天平文化が花開いた時代でもあった。きっと我々が今想像する以上に、美しくて、華やかで、すばらしいものだったに違いない。

そんなことを思っていた先日、平城京遷都にあわせた企画だと思うが、NHK衛星放送の映画で、「井上靖」原作、母校の先輩「熊井啓」が監督、「中村嘉葎雄」主演の「天平の甍(いらか)」を観た。DVDではリリースされておらず、VHSのみだけなので、今回は貴重な放映である。

天平5年(733年)、遣唐使とともに日本仏教の確立のために中国に渡った四人の日本人青年僧の青春と、彼らが唐の高僧、「鑑真和上」に出会い、二十年の歳月をかけて渡日に成功するまでの苦難の道を描いた作品。4人の留学僧のなかでただ一人、「普照」は「鑑真和上」らとともに帰国、奈良の地を踏んだ。そして、天平宝浩三年(759年)、「鑑真和上」は西の京に「唐招提寺」を建立、全国から学従が集り、講律、受戒が行なわれたのだ。

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天平の甍 [VHS]

井上靖 / 東宝




かの国もこの時代は、世界の中心にふさわしく、仏法や儒教の下、礼も節も、そして法も律も重んじた大人の国であったのだが ・・・ 。

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「唐招提寺」といえば、平成10年(1998)に、金堂を含む「唐招提寺」の伽藍建築が「世界文化遺産」となったこをきっかけに始まった金堂の10年がかりの大修理も去年に終わり、伽藍全容が見られるようになったばかりである。「唐招提寺」の仏像といえば、国宝「鑑真和上坐像」とならび、眼に焼きついて離れないほど印象的な国宝「千手観音立像」が頭に浮かぶ。

像高5メートル36センチ。金堂の須弥壇に、本尊・盧舎那仏坐像、右に薬師如来立像、左に千手観音立像(いずれも国宝)が並んで安置されている。何が印象的かというと、仏像の両肩から脇にかけて、小さな手、小脇手と呼ぶが、びっしりと円形に広がっているのである。造立当時は実際に「千の手」を持っていたらしいが、現在では大脇手42本、小脇手911本の計953本で、残りは失われてしまっている。奈良時代、8世紀の木造で、こんなに無数の「手」があるにもかかわらず、少しも異様さを感じさせず、伸びやかな印象と、涼し気ではっきりとした顔立ちをもつ仏像である。見ただけではわかりにくいが、大手・小手の掌には、絵具で「眼」が描かれていたらしく、文字通り「千手千眼」を表わしたものであった。

この仏像の「千眼」の話を聴いた時、すぐ想起されたのは、JAZZのスタンダード、「夜は千の眼を持つ」であった。1948年映画、「The Night Has A Thousand Eyes」の主題歌として書かれたというが、実際には、映画の中では、まったく使われなかったらしい。私が持っているCDの中では、「ティティアン・ヨースト/Tizian Jost/The Night Has A Thousand Eyes」、「ポール・デスモンド/Paul Desmond/Bossa Antigua」、エディ・ヒギンズ/Eddie Higgins/Don't Smoke In Bed」、「ヨーロピアン・ジャズ・トリオ/Europian Jazz Trio/The Windmill Of Your Mind」などのカバーがあるが、「ジョン・コルトレーン/John Caltrane」の特異なジャケットが印象的なアルバム「コルトレーンズ・サウンド/Caltrane's Sound」が一番有名か。

コルトレーン・サウンド(夜は千の眼を持つ)(+2)

ジョン・コルトレーン / Warner Music Japan =music=



「コルトレーン・サウンド」から「夜は千の眼を持つ」。 そのダイナミックなサックスの咆哮 ・・・。
John Coltrane;Sax (Tenor)、Steve Davis;Bass、Elvin Jones;Drums、McCoy Tyner;Piano

          

この曲、作曲者は「ジェリー・ブレイニン/Jerry Brainin」であるが、映画の主題歌として作られたのであるから、当然詩がついている。「バディ・バーニアー/Buddy Bernier」による詩、コルトレーンの咆哮からは想像できないような、なかなか繊細で、ミステリアスで、美しい歌詞である。

【 The Night Has A Thousand Eyes 夜は千の眼を持つ 】
                           作詞;Buddy Bernier  作曲;Jerry Brainin

「 ♪ Don't whisper things to me you don't mean  心にもない言葉を囁くのはもうやめて
   For words deep down inside can be seen by the night
                        夜は心の奥深くに隠した言葉まで見抜いてしまうから
   The night has a thousand eyes    夜は千の目を持っているから
   And it knows a truthful heart from one that lies
                         誠実な心と嘘をつく心を見分けることができるのです

    Tho' romance may have called in the past   あなたも過去に恋はあったのでしょう
    My love for you will be everlasting and bright  でもあなたへの愛は永遠
    As bright as the starlit skies               星空の輝きのように
    And this wond'rous night that has a thousand eyes
                              この千の目を持つ不思議な夜のように

             ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・            ♪」

この歌を歌っている歌手は少ないが、ヴォーカルで聴くなら「カーメン・マクレエ/Carmen McRae」(1920年4月 - 1994年11月)の「セカンド・トゥ・ノン/Second To None」が一番いいといわれています。しかし、残念ながら、まだ聴いたことがありません。そのうちに ・・・ 。

セカンド・トゥ・ノン

カーメン・マクレエ / ソニーレコード



また、私は「千手観音」と聞くと、どうしても「カサンドラ・ウィルソン/Cassandra Wilson」を想起してしまいます。いくつもの違ったジャンルの曲を取り込んで、自分の世界の色の曲に変えてしまう独特の魔術的歌唱の魅力が、まるで「千の手」を持っているように思えるからで、私は勝手に「The Diva With A Thousand Hands」と名づけていますが ・・・。その彼女の面目躍如たるアルバムは、「クローサー・トゥ・ユー~ザ・ベスト・ポップ・ヒッツ・コレクション/Closer To You」。過去にレコーディングされた彼女のアルバムの中から、ポップ・ヒットのカバー曲だけを集めたベスト・アルバム。「U2」、「シンディー・ローパー/Cyndi Lauper」、「スティング/Sting」、「モンキーズ/The Monkees」、そして「Harvest Moon」は「ニール・ヤング/Neil Young」のカバー ・・・ 。

クローサー・トゥ・ユー~ザ・ベスト・ポップ・ヒッツ・コレクション

カサンドラ・ウィルソン / ユーメックス



ロック・シンガー、「スティング/Sting」でヒットした「フラジャイル/Fragile」を。あまりにも美しいメロディを持つ曲なので、恋の歌かと思うかもしれませんが、反戦歌です。

           
 
 
 
by knakano0311 | 2010-10-22 00:06 | 音楽的生活 | Trackback | Comments(0)

最後のスイング?

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6月19日発売の「スイング・ジャーナル7月号」を買った。このあと一時休刊するというNEWSは前に書いたとおりである。(参照「スイングがなけりゃ意味がない・・・」 ) 最後にSJを買ったのは何年前のことであろうか? 記憶にまったくないので10年、いや20年前、それ以上になるかもしれない。そして、これが最後の発刊になるかもしれないという感傷に近い思い入れを持ってページを開いた。しかしその期待?は見事に外れた。いたって普通なのだ。そこには、多分いつもどおりと思われる記事が展開されている。感傷、悲壮、てらいなど微塵も感じられない。そして、アルバム評、ゴールド・ディスク選の広告スポンサー重視の方針もまったく変わってない。このことについてよく批判めいて言われるが、商業誌である以上、仕方がないのである。私はまったく当たり前のことではないかと思う。ただその上で、良質な音楽を届けようと頑張っているインディ・レーベルや、なかなか一般のJAZZファンには知ることができないが、ぴかっと光る何かを持っている国内外のアーティストを積極的に発掘、紹介するという姿勢がもっとあってもよかったとは思う。

「やはり休刊するんだ」という気配は、「LAST CHORUS(ラスト・コーラス)」という編集後記など一部に綴られた、編集者の感謝や想いから感じられるだけである。しかも、「しばらくの間、ちょっとのおやすみです」という軽めのメッセージをあえて装っているように感じられる。しかし、雑誌出版のことはよく分からないが、一度休刊してしまったら、復刊は相当困難な道であることは容易に察しがつく。そもそも、JAZZをささえるJAZZファンそのものが減少しているのだ。あのVINUSレコードですら¥1,500の低価格マーケティングをとらざるを得なくなっているのだ。また、より広範囲な音楽ファンを吸収するために、「ビルボード・ライブ大阪」と、名前とコンセプトまでも変えてしまった老舗のJAZZクラブ「ブルーノート大阪」の事例などが、端的にそのことを示しているように思える。

しかし、我々の世代にとって「スイング・ジャーナル」はバイブルであり、羅針盤であり、ファッションですらあった。次の時代に来るJAZZ、それを支えるJAZZファンとは? それをリードし、対応していく新しいタイプのJAZZ誌、あるいは紙メディアによる一方向の発信だけでなく、もう少し広く捉えたJAZZメディアのあり方を模索し、今一度再生されんことを願うばかりである。

異論はあるかもしれないが、「スイングジャーナル」誌の大きな功績の一つに、1967年にSJ主催で発足させた「ジャズ・ディスク大賞」がある。この賞は、レコード会社各社の自薦ノミネート作品を基にして、国内で該当年度中に発売されたCD/LP/ビデオを対象に「大賞選考委員」によって選出され、日本ジャズ界に最も貢献した作品に贈られる賞である。この賞がアーティストやレコード会社の励みにもなり、ファンにとっても大きな目安となりJAZZ界の発展に貢献したことは間違いない。

「ジャズ・ディスク大賞」の過去の受賞リストを眺めていて、この大賞は私のJAZZ歴とともにあったことを改めて感じた。
1985年度、第19回ジャズ・ディスク大賞・最優秀CD賞は「枯葉/マンハッタン・ジャズ・クインテット」である。子供にレコードプレイヤーのピックアップ・アームを折られ、しばらくJAZZから遠ざかっていたが、CDの普及を機会に再びJAZZに戻ってきたきっかけになったアルバムである。

枯葉

マンハッタン・ジャズ・クインテット/キングレコード



聴いてみますか? 枯葉にも収録されている「リカルド・ボサノバ/Recado Bossanova 」のライブ。

          


そして、第31回 ジャズ・ディスク大賞にあたる1997年度は当り年であったようだ。今でもお気に入りのアーティストやアルバムがリリースされた年でもあったのだ。そんな受賞作をリストアップすると、
【金賞;テネシー・ワルツ/カサンドラ・ウィルソン&ジャッキー・テラソン】、【銀賞;ミズーリの空高く/チャーリー・ヘイデン~パット・メセニー】、【ボーカル賞;ラブ・シーンズ/ダイアナ・クラール】、【日本ジャズ賞;ザ・トリオ/小曽根真】、【制作企画賞;アメリカの祈り/マンハッタン・トリニティ+1】、【録音賞(新録);トゥルー・バラード/アーチー・シェップ】、【最優秀新人賞;テナーズ・エニワン/ハーリー・アレン】、【最優秀新人賞;ビューティフル・ラブ/ケイコ・リー】。

なかでも1996年度、第30回の「ニュー・ムーン・ドーター」についで受賞となった、若手キーボード奏者「ジャッキー・テラソン」とのコラボの「テネシー・ワルツ」は、素材をスタンダードとしているが、ジャンルを超越したカサンドラ仕立ての孤高の世界が広がる私のお気に入りの一枚である。

テネシー・ワルツ
カサンドラ・ウィルソン&ジャッキー・テラソン / 東芝EMI
ISBN : B00005GKEC


聴いてみますか? 彼女の「テネシー・ワルツ」がYOUTUBEに見当たらないので、「マイルス・デイヴィス」の魂をテーマにした、これもお気に入りのカサンドラのアルバム「トラヴェリング・マイルス」から、オリジナルは「シンディ・ローパー」で、マイルスもカバーした「Time After Time」。
 
          
by knakano0311 | 2010-06-24 00:26 | おやじのジャズ | Trackback | Comments(0)

我がミューズたちの新作

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私にはJAZZボーカルで5人のミューズがいることは度々このブログでも書いた。「ジャネット・サイデル、カサンドラ・ウィルソン、ステイシー・ケント、ダイアナ・クラール」。そしてあと一人は日本人枠であるが、仮ミューズとして「伊藤君子」が入っている。その中の「ジャネット・サイデル」、「カサンドラ・ウイルソン」が相次いでアルバムをリリースした。

「ジャネット・サイデル/Janet Seidel」。彼女が過去にリリースしたアルバムの中に、彼女が敬愛する3人の女性歌手へのトリビュート盤がある。「ペギー・リー」、「ドリス・ディ」、「ブロッサム・ディアリー」へのそれぞれのトリビュート盤である。そのうち「ペギー・リー」と「ドリス・ディ」は廃盤になっていたが、「ペギー・リー」へのトリビュート盤は中古CDで見つけ(「我が心のミューズたち(1)  ジャネット・サイデル」参照) 残るは「ドリス・デイ」だけとなっていたが、やっと復刻盤が出た。

アメリカが生んだ国民的スター、「ドリス・デイ」のレパートリーをジャネットがカヴァーした好アルバムが、リニューアル・デザインで復刻! 24トラック全30曲収録。ドリスの温もり。そしてジャネットの安らぎ。

こんな帯がついていましたが、「Somebody Loves Me」から始まって、「Sentimental Journey」、「二人でお茶を」、「ケ・セラ・セラ」など、我々より少し上の世代に人は、ラジオから流れてくるドリスの歌声にまさに「豊かな国アメリカ」を感じて、かじりついたであろう30曲がぎっしり詰まっている。
かっては、ナット・キング・コール・トリオ、最近ではジョン・ピザレリ・トリオと同じ編成、ジャネットのピアノ、デヴィッド・サイデルのベース、チャック・モーガンのギターという、ドラムレスの変則ピアノ・トリオである。この編成が、アコースティックで、レトロな感じを出し、聴く人に安らぎを与えるジャネットのボーカルを更に際立たせている。

「ドリス・ディ」は今年、2008年のグラミー賞で「Lifetime Achievement賞」を受賞した。このことは引退してから40年経ってもドリスは、アメリカの国民的歌手としての人気が健在であることを示している。日本で言えば、美空ひばりのような存在であろうか。ドリスはJAZZ歌手ではない。ポピュラーソング・シンガーであるが、JAZZ歌手以上に気持ちよくスイングする。そんなドリスへの憧れと尊敬と親しみをこめてつくられたアルバムが、「Doris & Me」。聴くほどに心が和み、ジャネットの本領発揮のさすがの一枚。

ドリス&ミー ~センチメンタル・ジャーニー
ジャネット・サイデル / / ミューザック
ISBN : B00175HCS0
スコア選択:


「Janet Seidel - Sentimental Journey」

          


かって、私は「千手観音」に喩えた「カサンドラ・ウイルソン/Cassandra Wilson」の新作「Loverly」。(「Black Beauties  ~孤高の歌姫たち~」参照) カサンドラは常にひとつ所にとどまらず、アルバムをリリースするたびに、新しい試みを試している。前作『Tunnderbird』以来の、2年ぶりのアルバム。そして彼女自身にとって、ブルーノート・レコードより初となるフル・スタンダード・アルバム。ということでかなりの期待と注目を持って聴いてみたが、残念ながら期待を裏切るものであった。アルバムに統一感、明快なコンセプトがないのである。1曲目「Lover Come Back Me」。スイング感溢れる冒頭の曲、「きたきた・・・」と思ったのもつかの間2曲目はムーディな甘い「黒いオルフェ・カーニバルの朝」。カサンドラってこんなんだっけ。10曲目「Dust My Room」。ブルージーな感覚溢れる佳唱。ベースとのデュオでうたう「The Very Thought Of You」。一つ一つの個別の歌はすごくいいのである。しかしアルバムを通して聴くと、「各論OK、総論NG」という違和感を覚えるのを禁じえなかった。千手観音全身を見たいのではないのだ。一本一本の手(アルバム)にフォーカスし、メッセージをこめることによって、聴き手の脳裏に千手観音全体が浮かび上がるということを期待しているのだ。ベスト版みたいなものはまったく期待していないのだ。ブルーノートからの期待の初リリースなれど、新しきプロデューサーはここを間違えているようだ。

Loverly

Cassandra Wilson / Blue Note



「Cassandra Wilson - Dust my broom」

          
by knakano0311 | 2008-06-15 18:27 | ミューズたちの歌声 | Trackback | Comments(0)

60歳過ぎたら聴きたい歌(7) ~テネシー・ワルツ The Tennessee Waltz~

「テネシー・ワルツ」。1948年に作られたアメリカンポップスである。1946年、ピー・ウィー・キングが作曲した曲に、レッド・スチュワートが詞をつけ、1948年にはじめてレコーディングされた。1950年に「パティ・ペイジ」がカバーしたものが世界的なミリオンセラーとなった。日本では、1952年、和田壽三が訳詞したものを当時14歳(マセてる!)の「江利チエミ」が唄って大ヒットした。最近では「綾戸智恵(最近智絵から本名の智恵に改名)」のコンサートのアンコール・リクエストNo1.。NHKの番組でカラオケの歌唱指導をしたほどの綾戸の十八番曲。
そして、私にとっても「テネシー・ワルツ」は、高校時代、思春期のほろ苦い想い出の曲である。

私の通った高校は進学校だったので、当時は1クラスに女生徒は数人ほどであった。夏休みが終わり、学園祭が近づくと体育の授業に「フォークダンス」の練習が加わる。高校1年の時、このことを知った私は、大げさかもしれないが大変な衝撃を受けた。なにしろ、ダンスは勿論のこと女の子の手なんて握ったこともなかったからである。しかしながら奇妙な期待感というか、昂揚感みたいなものに包まれた記憶がある。しかし、現実は厳しく、男女のバランスがまったく取れていないから、当然女性側に廻る男子が約半分いるのである。こちらの側になるとその授業時間はずっと男子生徒の相手という悲惨な時間を過ごすことになる。また運良く男子側になったとしても、女生徒の数は圧倒的に少ないのでパートナー・チェンジを繰り返しても、めぐり合う確率は、これまた非常に低いのである。あと1人で女生徒がパートナーに廻ってくると思ったその途端、曲が終わり地団太踏んだことは我々男子は皆、何回も経験していたのである。

しかし、面白いもので、坂の上の母校のふもとにある女子高校ではまったく逆の現象が起こっていたのである。そして、学園祭当日のフォークダンスは、今で言えばオープン参加のため、ふもとの女子高校生が大挙して訪れるのである。こうして校庭は、めでたく女子高校生であふれ、そして、いろいろな青春物語がここから始まっていった。私はといえば、ふもとの女子高校に片思いの女生徒がいたが、フォークダンスを踊ることもなく、勿論声もかけることなく、ただただほろ苦さだけが残った学園祭であった。

フォークダンスの伴奏曲のため、歌はなくカントリー調の演奏だけと記憶しているが、そんなパートナー・チェンジがあるフォークダンスの曲として、テネシーワルツは鮮やかな印象を今でも残している。私のとって、間違いなく、思春期の1ページを開いた歌であった。

歌詞は、「恋人とテネシーワルツを踊っていたら、旧友が来たので、彼氏を紹介したら、その友達に恋人を盗まれてしまった」という意味である。やや不道徳な歌にもかかわらず、この歌がテネシー州の州歌になったというから面白い。


さあ、誰の歌を選ぼうか?「名曲に名唱あり」で選ぶのに困ってしまうが、ここは、わがミューズの一人、孤高の歌姫の「カサンドラ・ウィルソン」に登場してもらおうか。(Black Beauties  ~孤高の歌姫たち~ 参照)
若手キーボード奏者「ジャッキー・テラソン」とのコラボで、アルバムの原題は「ランデブー」。分かっていないレコード会社によって「テネシー・ワルツ」というタイトルになっているが、スタンダード集で、「テラソン」と出会いがこのアルバムを生み出した最大のテーマである。だからタイトル原題は「ランデブー」であり、いつものようにカサンドラ仕立ての世界に仕上がっている。抑制されたなかにきらりと感性がひらめく「テラソン」のキーボード。淡々したなかに秘めたる情熱感じさせる「カサンドラ」の歌いぶり。やはり一級品のJAZZボーカルとして、こんなポピュラーな曲を歌っても、ジャンルを超越した彼女の孤高の世界が広がる。

テネシー・ワルツ
カサンドラ・ウィルソン&ジャッキー・テラソン カサンドラ・ウィルソン ジャッキー・テラソン ロニー・プラキシコ ケニー・デイヴィス ミノ・シネル ロニー・ブラキシコ / 東芝EMI
ISBN : B00005GKEC
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「♪ I was dancin' with my darlin'
    To the Tennessee waltz,
     When an old friend I happened to see.
      Introduced her to my loved one,
       And while they were dancin',
         My friend stole my sweetheart from me.

    I remember the night,
     And the Tennessee waltz,
       Now I know just how much I've lost,
        Yes I lost my little darlin',
         The night they were playin',
           To the beautiful Tennessee waltz    ♪」


「Cassandra Wilson - Tennessee Waltz」

          
by knakano0311 | 2007-11-13 00:10 | 60歳過ぎたら聴きたい歌 | Trackback | Comments(0)