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大屋地爵士のJAZZYな生活

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もしもピアノが弾けたなら(19)   ~ たどり着いた一里塚から ~

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「ジャック・ルーシェ」に触発され、「ヨーロピアン・ジャズ・トリオ」を聴いてから、魅入られたジャズ・ピアノの世界。このシリーズで、ずっと書き綴ってきたジャズ・ピアニストたち。そして、たどり着いた一里塚・マイルストーンは、「ジョバンニ・ミラバッシ/Giovanni Mirabassi」であった。

現在のヨーロッパのジャズシーンを代表するピアニストであり、日本で絶大な人気を得る「澤野レーベル」の看板ピアニスト。1970年イタリア・ペルージャ生まれ。ピアニスト、アルド・チッコリーニ(クラシック界で有名なフランス在住のイタリア人ピアニスト)と衝撃的な出会いを経て、92年パリに移住後、96年アヴィニョン・フェスティヴァルで大賞を受賞したという経歴。

彼をどう評したらいいだろうか。私がJAZZピアノに望むすべてのものを持っていると言ったらいいだろうか。寺嶋氏のいう「哀愁とガッツ」は勿論、それに加えて心の奥にせまってくる熱く力強い思い、豊かな詩情、ロマンチシズム、気品と典雅、スイング、強さ・・・・・。小難しい曲をとりあげたり、超絶技巧を用いるわけではない。きらびやかに音数を多く重ねる訳でもない。 和声の響きを大切にしながら、ただひたすら曲の持つ情感を美しさへと高める演奏を展開させるだけである。

その特長はピアノ・ソロによく表われている。傑作、ミラバッシ入魂のソロ・ピアノ・アルバムである「Avanti!」。2000年11月録音。このアルバムに収録された美しい詩情溢れる曲は、実はすべて革命歌であり、反戦歌である。そのことを知って、私は驚くと同時に、革命歌をこれほどまでに情感込めて歌い上げられるピアニストを初めて知った。
CDに添付されている分厚いブックレットには、20世紀の重要な政治的メッセージに満ちた写真と共にミラバッシ自身の曲ごとへのコメントが記されている。しかし、これはライナーノーツや解説などではない。あのチェ・ゲバラも写っているように、これは、革命を希求し、そして倒れていった多くの戦士たちへの鎮魂歌&写真集である。

冒頭の甘美このうえない曲は、「El Pueblo Unido Jamas Sera Vencido」。この曲はチリの圧政に対して抵抗したレジスタンスのリーダー「Sergio Ortega」によって1973年に書かれた歌。「The United People Will Never Be Defeated/団結した民衆は決して負けない」という英訳タイトルであることが記されている。もともとアメリカの黒人にルーツを持ち、抑圧と差別の歴史の中で市民権を得ていったJAZZを、ミラバッシは、あらためて近代世界史のなかで抑圧や暴力に対する抵抗・解放の普遍的なメッセージとして位置づけているように思えるのだ。その意図は、ダコタ・アパートの前で逝った「ジョン・レノン」の「Imagine」を取り上げていることでも読み取れる。
そしてラストの曲は「ポーリュシュカ・ポーレ」。ノンポリ学生であった私であるが、当時の学生運動に参加した友人やデモに参加した思い出が、かすかな傷みとともに甦る。

この哀切に満ちた情感をこめて、ミラバッシにより演奏される抵抗の歌々が見事なピアノ・ソロに昇華しているアルバムである。アルバム・タイトル「Avanti!」とは、たしか「進め!」という意味の言葉であったか・・・。

Avanti!

Giovanni Mirabassi / Sketch



「Giovanni Mirabassi ― El Pueblo Unido Jamas Sera Vencido」

          

ベースの「Daniele Mencarelli」、ドラムの「Louis Moutin」をくわえてのピアノ・トリオのライブ・アルバム。いずれもオリジナルな曲であるが、ラストの曲は、やはりあの甘美極まりない「El Pueblo Unido Jamas Sera Vencido」。トリオになってもその情感豊かなピアノは変わらないミラバッシの屈指のピアノ・トリオ・ライブ。

Dal Vivo!

Giovanni Mirabassi / Sketch



トリオのメンバーを一新して臨んだ澤野リリースのミラバッシ最新作、「Terra Furiosa」。入水して果てたアルゼンチンの女流詩人「アルフォンシーナ・ストルニ」を偲ぶA・ラミレス作曲、フェリックス・ルーナの作詞、メルセデス・ソーサの歌によって知られ、サンバの最高傑作といわれる「アルフォンシーナと海」からこのアルバムは始まる。このアルバムは、痛みを知り、傷を抱く者たちへの、妙なる救済の調べであるというコピーは、これら収録曲のタイトルからも窺える。

Terra Furiosa

Giovanni Mirabassi / Discograph



以上のアルバムは、いずれも澤野工房からリリースされている。

書き綴ってきたこの「もしもピアノが弾けたなら」シリーズ、「ジョバンニ・ミラバッシ」というマイルストーンにたどりつたところで、いったん筆をおこうとおもう。そして、すべてのジャズ・ピアノ・トリオの祖といっていい「ビル・エヴァンス」へ遡る旅をいつかはじめたいと思う。
ジャズ・ピアノ・トリオの祖、「ビル・エヴァンス」の至高のアルバムから1枚あげておこう。「ワルツ フォー デビー」。

ワルツ・フォー・デビイ+4
ビル・エヴァンス / / ユニバーサル ミュージック クラシック
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「彼岸の薄明かり」とは、ピアニスト「南博」氏が「ビル・エヴァンス」の音楽を評した言葉。彼に彼岸の先にある何かを見せるために彼の廻りの人々が命を断っていたのでは・・・という。たしかにエバンスの晩年の演奏の中には、長い苦悩や不幸な体験を経て、彼岸を感じさせるような危ない哀愁、美感が漂っていると感じるのは思い入れが過ぎるだろうか・・・・。
by knakano0311 | 2009-01-11 00:11 | もしもピアノが弾けたなら | Trackback | Comments(0)